ロボットにミツバチの代役を 人工授粉ロボットの開発をめざして
「洋梨の貴婦人」は気難しい?
新潟県の名産品に、「ル レクチェ」という品種の洋梨があります。「洋梨の貴婦人」と呼ばれ、贈答用に人気のある高級品種です。ル レクチェの栽培は難しく、その要因のひとつは自家受粉できないことです。昆虫などによる受粉では結実率が低いため、人工授粉が行われています。ル レクチェの生産農家は小規模ですが、人工授粉させる花の数は1農家当たり数万個以上に及びます。春の一週間ほどの開花期間中に人工授粉を終わらせなければならず、高齢化が進む中で、生産農家にとって大きな負担となっています。
人工授粉をロボットで
この問題を解決するために、人工授粉ロボットの研究が手掛けられています。ロボットが人工授粉を行うためには、まず、ロボットが花を見つけ、その向きを識別し、めしべの位置を正確に把握しなければなりません。ここはAIによる画像認識技術の出番です。大量の花の画像データひとつひとつにラベル付けを行い、AIに学習させます。天候による背景の変化の影響も学習し、8割程度の花は識別できるようになりました。現在は、ミツバチのような細かい作業をするロボットをどう実現するかという段階に来ています。
社会課題の解決は人間を中心に
収穫した実のランク付けも大変な作業です。センサとAIで選別を行い、判別が難しいものだけを人が目視で判断すればよくなることをめざして研究が進められています。等級が落ちる要因のひとつに、皮の色の一部が変色してしまうことがあります。これは、実が大きくなる段階での袋がけで袋の中に水分が入ることで起こります。そこで、袋内の水分量をセンサで測り、袋の材質や大きさなどを比較検討する研究が行われ、最適な袋の提案がなされています。
農業支援のシステム開発では、農業従事者の意見を取り入れて改善を繰り返します。社会課題の解決に情報通信技術を役立てようとするときに大切なのは、ユーザーの真のニーズを把握して、ユーザー中心の考え方で設計・開発を行うことです。
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新潟大学 工学部 工学科 知能情報システムプログラム 教授 山﨑 達也 先生
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