どちらが写真か区別できないほど高品質なCGを作るには
よりリアルなCGを作るには?
ゲームなどにも使われているコンピュータグラフィックス(CG)では、主にポリゴンレンダリングという手法が使われています。計算量が少ないため高速で処理できるという利点があるものの、現実と同じような描写をすることは難しいものです。そこで、より現実に近いCGを実現する手法として、レイトレーシング(光線追跡法)が開発されました。
レイトレーシングで作った画像では、例えば鏡やガラスなどへの風景の映り込みや光の屈折まで正確な再現が可能です。その結果、写真と並べても見分けが付かないほどのCGを作成できるようになりました。
専用回路で計算時間を短縮
レイトレーシングは計算量が多く、画像の生成に何十分も時間がかかる点が課題です。計算速度を上げるために、ハードウェアとソフトウェアの開発が始まりました。
ハードウェアの研究でめざすのは、専用回路の開発です。レイトレーシングでは光線の動きを1本ずつ計算しており、どの物体に光がぶつかっているのか求める「交差計算」という工程に最も時間がかかります。そこで交差計算に特化した回路をあらかじめ作り、レイトレーシングに組み込む方法がとられ、これによって、数十分かかっていた処理が数分まで短縮されています。
アルゴリズムの工夫
専用の回路は、アルゴリズムを工夫したソフトウェアと組み合わせることで、計算がさらに速くなります。例えば仮想空間の中を1台の車が動くとします。このとき従来の手法では、車が動くたびに空間全体を計算し直し、その後画像を作るときにもう一度空間全体を計算していました。そこで、動いている車だけを計算し、そのあと空間全体を計算して画像を作る手法が試されています。つまり空間全体を計算する回数を減らし、処理にかかる時間を短くするのです。また、機械学習とレイトレーシングを組み合わせるなど、ほかの手法との融合も試されています。研究がさらに進めば、現実に近いCGをリアルタイムで生成できるようになるかもしれません。
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先生情報 / 大学情報
会津大学 コンピュータ理工学部 コンピュータ理工学科 上級准教授 西村 憲 先生
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