抜けてしまう乳歯に、虫歯の治療が必要なわけとは
歯が生え替わる理由
人間は生後7カ月頃から乳歯が生え初め、2歳6カ月頃には上下20本が生えそろいます。その後、6歳頃になると永久歯への生え替わりが始まり、すべての歯が永久歯になるのは12歳頃です。つまり乳歯は生涯の中で約9年間しか使われません。歯の生え替わりの際、永久歯が生えてくると、歯の根が溶けることで乳歯は抜け落ちます。なんらかの原因で乳歯が抜けないと、永久歯が歯茎の横から生えたり、噛み合わせが悪くなったりする場合があります。このようなリスクがありながらも人間が歯の生え替わりを選んだのは、頑丈な永久歯だからこそ噛める硬いものを食べることで、大人に必要なカロリーを確保しなければならなかったからだと考えられます。
乳歯で食べ物を噛むための学習
私たちは食べ物の種類により、意識せずに噛む力や回数を変えています。硬いせんべいと、綿あめのようなふわふわしたものでは、最初の一口目から力の入れ加減を変えているはずです。これは、食べた経験を学習しているからです。乳歯の奥歯の根の周りには歯根膜というクッションがあり、圧受容体という力を感じる器官が備わっています。そこで、食べ物によってどれくらい噛む回数が必要であり、どれくらいの時間をかければ飲み込めるかを学習しています。学習の期間は約9年間ですが、その間に噛み方を学習し、そこで脳にインプットされたデータが大人になっても使い続けられるのです。
治療と予防の必要性
ですから、抜けてしまう乳歯でも、虫歯になったら治療が必要です。もし、乳歯が虫歯になり穴があったり痛みがあったりして、硬いものをしっかりと食べられなければ、脳は噛むことの正確なデータを得られないからです。正確なデータが得られなければ、大人になったとき硬いものを食べるのが苦手で、噛まずに飲み込んでしまうなどの支障をきたす可能性があります。そのため抜ける乳歯も、虫歯になったらきちんと治療すること、さらに虫歯にならない予防の教育がとても大切なのです。
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先生情報 / 大学情報
鶴見大学 歯学部 歯学科 教授 朝田 芳信 先生
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