簡単な本を読むだけ? 苦手意識から解放される英語学習法
易しい本を次々読むことで生じる変化
「多読」とは、ごく易しいレベルの英語の本をたくさん読んでもらうことで、英語力・読書力向上を図る英語教授法です。もちろん、時間をかけて一つの英語文献を精読したり、単語をコツコツ覚えたりする勉強法も必要ですが、多読はそれとは異なり、簡単な本を学生が自由に選び、次々に読み進めていきます。多読の最大の効果は、英語に対する苦手意識からの解放です。イギリスの小学生向け読本「Oxford Reading Tree」シリーズのような易しい本から読み進めるうちに、多くの学生の中で変化が生じて、英語を読むことが苦痛ではなくなっていきます。次第に『ハリー・ポッター』シリーズやカズオ・イシグロの小説などを原書で楽しめるようになっていき、またTOEICのスコアも大きく向上するなど、英語力の飛躍がみられます。
多読授業で大切なこと
多読の授業には、いくつかの特徴があります。まずは受講者全員共通のテストや競争をしないことです。また、特定の書籍を強制的に読ませるのではなく、本を自分で選択できることです。一つの教室にいる学生たちがそれぞれ異なる本を読んでいるため、必然的に一斉指導ではなく一人一人個別に対応した指導になります。この授業法で重要なのは、学生が自主的に本を読む環境と、教員が個別指導する体制を整えることです。また、多読を指導する教員には、英語で書かれた本に関する広く深い知識が求められます。
学生の頭の中で何が起きている?
多読授業の学習効果に関して懐疑的な意見があることも事実です。それに答えるには、多読授業を受ける学生の頭の中でどのような変化が生じているのかを明らかにしなければなりません。そのために、多読授業受講者を対象にした詳細なインタビュー調査で、多読授業のどのような側面が英語力向上や苦手意識の解消に影響するのかが調べられています。多読授業受講者が自分の経験について語ること(ナラティブ)の探究に特化した研究はまだ少ないため、今後深めていく必要があります。
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先生情報 / 大学情報
鶴見大学 文学部 英語英米文学科 教授 深谷 素子 先生
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