新たな電池の材料になる? 身近で謎だらけなガラスの世界
ガラスの構造は謎だらけ
固体の中には「アモルファス」と呼ばれる不規則な構造を持ったものが存在します。例えばガラスです。ガラスは成分の種類や割合、製造方法の工夫により、色や硬さ、溶ける温度などが変化します。しかし自在に硬さを変える方法やガラスになりやすい材料の特徴など、科学的に解明されていないことも多いです。
最近の研究では強力なX線を使った分析でガラス内に存在する原子のつながりの特徴がわかってきました。ガラスの内部では原子がリング状につながっています。ガラスになりやすい材料で製造すると、原子が大小さまざまなサイズのリングを作りますが、ガラスになりにくい材料では、小さめのリングだけになる傾向にあります。この特徴を制御することができれば、ガラスになりにくい材料でも簡単にガラスにすることができたり、これまでにない新しい機能を持つガラス材料を作製できたりするかもしれません。
電気を流すガラスがある!
ガラスの中には電気を流すものも存在します。例えばカルコゲンとハロゲンという2種類の元素が入った、カルコハライドガラスです。もし電池の材料として応用できれば、液漏れをしない全固体の電池を開発できるかもしれません。
全固体電池は自動車業界や医療現場などさまざまな分野で必要とされています。現在の溶液系電池で起こる液漏れによる発火事故や健康被害を防ぐためです。より安全な電池を作るためにも、ガラスの構造を分析する基礎研究が求められています。
ガラス電池開発の課題
ガラスで電池を作るためには、溶液系電池に劣らないエネルギー量を実現しなければなりません。そのためにはガラスの中を流れるイオンの数量を増やすか、イオンの移動速度を上げる必要があります。イオンの量を大幅に増やすことは困難ですが、速度は「移動度」と呼ばれるイオンの動きやすさを上げることでどこまでも速くできる可能性があります。ガラスのようなアモルファスな構造の中では移動度が上がることがわかっていますが、移動度がけた違いに上がる理由などはまだ研究の途中です。
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山形大学 理学部 理学科 化学コースカリキュラム 教授 臼杵 毅 先生
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