植物に学べ! 「人工光合成」で太陽光を化学エネルギーに!
理想のエネルギー変換は光合成
太陽光を化学エネルギーに変換するお手本は、植物の光合成です。植物は、太陽光を用いて、水と二酸化炭素から酸素と炭水化物を生成しています。我々動物はこの光合成反応と全く反対のことを行って生存しています。このように人工的に太陽光を化学エネルギーに変換できれば、循環型のエネルギー環境を構築でき、エネルギー問題の解決に貢献できます。
機能性色素分子の並びを制御する方法を発見
光合成は、光を吸収する部分(光捕集系)と、物質を変換する部分(物質変換系)とで構成されています。光捕集系の組織を作るためには、光を集める機能性色素の分子を規則正しく並べる必要がありますが、分子の並びを人工的に制御することは極めて困難で、その方法の開発が課題となっていました。しかし、近年、粘土鉱物を活用することで、分子の並びを人工的に制御する「サイズマッチングルール」という方法が見出されました。これは、粘土鉱物表面の負電荷の密度を制御することで、負電荷と引き合う機能性色素分子の並びを制御する方法です。
粘土鉱物は、ケイ素、マグネシウム、アルミニウムを含む板状の粒子で、表面に負電荷(-)を帯びています。負電荷は、ケイ素がアルミニウムに置き換わるときに発生するもので、置換の割合により、負電荷の密度は変わります。一方、機能性色素分子は、陽イオン(+)性分子なので、粘土鉱物の負電荷と引き合います。したがって、粘土鉱物の負電荷の密度を制御すれば、それと引き合う機能性色素分子の並びも制御できるのです。
国家プロジェクトで技術開発に挑戦
小学生でも知っている光合成ですが、実はそのメカニズムは非常に複雑で、人工的に行うには、まだまだたくさんの課題を解決しなければなりません。しかし、国家プロジェクトが立ち上げられるなど、国を挙げての挑戦が進められており、人工光合成の技術開発には、大きな期待が寄せられています。
参考資料
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