生命科学の最先端を担う究極の光学顕微鏡
分子一つひとつが鮮明に見える顕微鏡
生命科学分野の最先端研究に欠かせないのが顕微鏡です。一般的に使われているのは、光を使った光学顕微鏡ですが、従来のものは、光の回折限界という物理的な原理のために、光の波長の半分程度である200ナノメートル程度より小さいものを鮮明に見ることはできませんでした。しかし、超解像蛍光顕微鏡の登場により、従来の10分の1程度である20~30ナノメートル、つまり生きた細胞の分子一つひとつまでが見えるようになったのです。この顕微鏡は、ドイツのステファン・ヘル氏が最初に開発し、21世紀に入ってから製品化されました。
どんな原理で解像度を高めたのか?
物質に光が当たると、光を吸収してエネルギーの高い状態になり、もとの状態に戻ろうとする際に光を放出しますが、これが「蛍光」です。蛍光顕微鏡は、この原理を利用したもので、超解像蛍光顕微鏡は、物質全体ではなく、物質の一部だけを光らせる状態を作り出すことで、解像度を高めています。一つは、光の回折限界まで照射範囲を絞り込んだ光と、この光の周囲を囲むようなドーナツ型の「STED」というビームを当てて物質に光らない部分を作り出す方法です。また、蛍光色素で染められた物質の分子は、ずっと光っているのではなく、ちかちかとまたたいているので、この単一分子の「ブリンキング」という現象を強調して、一部だけを光らせるという方法もあります。
超解像蛍光顕微鏡でなにができる?
以前は、ぼやっとしか見えなかった20~30ナノメートルの世界が、超解像蛍光顕微鏡によって、細胞や分子レベルで観察できるようになりました。がん細胞がどう増えていくのか、ナノ粒子の細胞ががん細胞にどう作用しているのかなどの医療分野での応用はもちろん、タンパク質同士の相互作用を確認したり、ヒトゲノム解析の効率を上げたりするなど、超解像蛍光顕微鏡はさまざまな分野で最先端の研究に使われ貢献しているのです。
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先生情報 / 大学情報
山形大学 工学部 化学・バイオ工学科 准教授 堀田 純一 先生
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