光技術で、がんを早期に発見できる
光に物質が吸い寄せられる
光は粒としての性質もあるので、運動量保存の法則が成り立ちます。止まっているボールに違うボールをぶつけると、ボールが反対側に動きます。同じように光の粒であるフォトンをある物体にぶつけると、とても小さな力ですが、動かすことができます。また光の屈折は、光の動いている軌跡を現しています。動く向きを変える時、水などの相手側に力を作用させているのです。これを光圧力と言います。小さなガラス球に光を集光すると、屈折の法則で、ガラスに入る時に光が曲がり、出る場所でも屈折します。入る時と出る時にガラス球に加えた力を合わせた合力は、光が集まる点に物質を吸い寄せる方向の力になります。そのため、ガラス球は光を動かすと付いてきます。この性質を使って細胞を見る研究が進められています。
細胞を回転させて撮影する
がんの診断にはレントゲンやCTスキャンなどが使われますが、これらは予備診断でがんの疑いがわかるものです。確定診断は腫瘍の一部を取り出して調べます。胃がんなどは内視鏡を飲み込んで腫瘍を採りますが、乳がんや前立腺がんでは身体に針を刺して採ります。痛い思いをして採られた腫瘍を顕微鏡で見て、細胞の並びの乱れを見ます。しかし、乱れていれば手遅れです。早期がんを見つけるには、細胞の中にある細胞核がほんの少しだけ大きくなっているかどうかを見分けます。慣れた人でないとわかりません。しかも体積が増えていることがわかったとしても、成分を測る計測機器は現在ありません。
そこで、光圧力を使った方法が研究されています。細胞の中心から少し離れた場所に2つの光を当てます。すると細胞は2つの場所に吸い寄せられるため、結果として回転します。回っている細胞を撮影してコンピュータで処理すれば、X線CTによる人体の断面像のように、細胞を輪切りにした姿を見ることができ、大きさや内部の成分を測れるようになります。この技術を使えば、がんの早期発見に大きな力を発揮するでしょう。
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