海苔の新種を発見し、養殖に役立てよう!
ノリは多様性に富んだ生き物
海産物としてなじみの深い「海苔(ノリ)」は多様性に富んだ生き物です。日本近海だけでも31種類が生育し、さらにまだ新種がいると考えられています。形態的特徴が少ないため見分けにくいのですが、解剖学的観察によって形態に違いがあり、DNA解析で明らかに違う点があれば、別の種だと判明します。また、ノリは胞子の発芽時に減数分裂が起こるので、通常のノリと色変わりした変異体のノリを掛け合わせると、色がきれいに半分ずつ分かれたノリなども作ることができます。
異なる2種の交雑もできる!
ノリは無性生殖によるクローン増殖もするため、この特性もうまく利用しながら養殖されています。クローン増殖で作られたノリから、遺伝的に均一な純系保存株に分離することもできます。また、現在の養殖対象種であるスサビノリと、今は絶滅危惧種となったアサクサノリの種間交雑を試みたところ、両種の染色体を持った倍数体(異質倍数体)のノリになることが明らかになりました。野生ノリの自生地でも、種間交雑によって生じた異質倍数体が見つかり、祖先種のスサビノリとアサクサノリに比べて生長が速いこともわかってきました。このため、ノリでも異なる2種の種間交雑によって品種改良が取り組めます。
高い水温に適したノリ作り
地球温暖化の影響もあり、養殖対象種であるスサビノリの生産量が年々減少しています。スサビノリはもともと北海道から東北に生育していた北方種のため、あまり暑さに強くありません。このため、高水温でも育つ種を探すため、南方の海域でも野生ノリの調査が行われています。高水温耐性かつ高生長のノリが見つかれば、新たなノリ養殖対象種として利用できる可能性があります。たとえそのノリ自体があまり生長しなくても、突然変異育種や交雑育種により品種改良に取り組むことができます。また、ノリは成熟期を迎えるまでどんどん大きくなるため、収穫量を増やすために成熟しにくいノリを作ることも考えられています。
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先生情報 / 大学情報
東京海洋大学 海洋生命科学部 海洋生物資源学科 准教授 二羽 恭介 先生
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