系統的なタンパク質の解析で、医薬品開発に寄与
バイオ医薬品開発のために知りたいこと
数多くあるタンパク質の個々の性質と機能を解明する研究は、これまで世界中で盛んに行われてきました。そして近年は、タンパク質の構造と機能を系統立てて解析する研究が行われています。個々の研究だけでは、あるタンパク質の中の特定のアミノ酸が重要であることがわかっても、そのアミノ酸がどのように機能しているのかがわかりませんでした。タンパク質から作るバイオ医薬品を開発するには、その仕組みを分子・原子レベルで系統立てて知ることが大切です。実験をして、計算機科学的な解析をしてわかる物理化学的な数値データをもとに系統立てて把握することで、医薬品を作る「ドラッグデザイン」の進化に寄与できます。特に、金属イオンが結合している「金属タンパク質」は、生体のホメオスタシス(体内環境を一定に保つ現象)をコントロールして、解毒作用や活性酸素を除去する機能など、生命現象に重要な役割を果たします。
分子レベルで理解する「弱い相互作用」
タンパク質は、アミノ酸が鎖状に連なってできていますが、その鎖が折りたたまれた構造は、細胞機能発現の鍵になっています。折りたたまれる際に働くもののひとつは、「弱い相互作用」と呼ばれる、分子の共有結合などよりずっと弱い力です。つまり、「弱い相互作用」を分子レベルで理解することが、医薬品の作用を理解し、新しい医薬品を開発することにつながるのです。
環境浄化や新材料・デバイスの開発にも
この研究の成果は、医薬品の分野にとどまりません。例えば、脱窒菌というバクテリアは、温室効果の高い窒素酸化物を窒素分子に還元するという、窒素の循環に欠かせない存在です。脱窒菌内の金属タンパク質を分析することにより、地球温暖化を食い止め、環境浄化の作用を持つ酵素を作り、活用することが期待されています。また、さらにタンパク質の構造と機能との関係の解析が進めば、新しいバイオ燃料電池、バイオセンサなど、新材料やデバイスの開発にも貢献できると考えられています。
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先生情報 / 大学情報
茨城大学 理学部 理学科 教授 高妻 孝光 先生
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