快適で安全な生活を支える光ファイバ技術
データ通信だけじゃない光ファイバの用途
スマホがいろいろな場所でインターネットに接続できるのは、光ファイバによる通信ネットワークが、国内の隅々まで張り巡らされているおかげです。それ故に、光ファイバは「データ通信のためだけのもの」と思われがちですが、それ以外の分野でも、光ファイバの特性を応用した活用法の研究が進められています。例えば、ダムや橋梁などの重要部分に光ファイバを装着し、老朽化による変形を監視する「歪みセンサ」が、すでに実用化されています。
変形するといつもと違う色を反射
光ファイバは、透明な「コア」の周囲を屈折率が低い「クラッド」で包んだチューブ状の二重構造で、その中をレーザー光が反射や屈折を繰り返しながら伝搬します。歪みセンサに用いられる光ファイバ素子の場合、コアの屈折率を一定間隔で高めた特殊構造が採用されており、特定の波長(色)の光を反射します。この素子が曲がったり伸びたりするとコアの屈折率や屈折率変化の間隔が変化し、通常とは異なる波長の光を反射します。大がかりな計測を行わなくても、伝搬する光の変化で建造物の変形がわかるのです。また、従来の光ファイバとは異なり、クラッド部分に複数の空孔を設けることでコアよりも屈折率を低くし、光をコアに閉じ込める光ファイバの研究も進められています。
5Gを使うために光ファイバの進歩も重要
5G通信エリアが広がっており、さらに高度な6G通信も、実用化に向けた研究が進んでいます。より大容量のデータ通信が可能となりますが、問題もあります。電波は周波数が高くなるほど直進性が強くなるため、5G、6G通信用の電波は大きなビルなどを迂回できなくなり、通信が途切れるエリアが多数発生するのです。
問題解決のためには基地局の増設が必要ですが、そのためには、現状と同程度の電力で、より効率的にデータ転送できる光ファイバ網を実現させなければなりません。「すでに完成されている技術分野」と考えられがちな光ファイバですが、未来に向けた課題と可能性は大きいのです。
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先生情報 / 大学情報
茨城大学 工学部 電気電子システム工学科 教授 横田 浩久 先生
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