電子レンジだけじゃない! 期待が高まるマイクロ波の応用
夢の「インテリジェント電子レンジ」
電子レンジはマイクロ波を食品に当てて、そこに含まれる水分子やイオンなどを振動させることで食品加熱する家電です。マイクロ波とは人工的な電磁波の一種で、マグネトロンという発振器から発生させます。しかし、マイクロ波の強さや周波数が不安定で、食品をおおよそ加熱することしかできません。最近は、食事に個食化が取り入られており、食材へのこだわりだけではなく、各食品の適温加熱が求められています。そこで、携帯電話などに使われている、揺らぎのないマイクロ波を発生させることができる「半導体式発振器」を改造し、電子レンジに応用しました。お弁当の一つひとつの食品を適温に自動加熱したり、アイスクリームを自動的に食べごろの柔らかさにしたりできる「インテリジェント電子レンジ」が実現しました。
植物の生育をコントロール
そんな揺らぎのないマイクロ波を植物の種や苗に当てると、その植物の成長が速くなったり、害虫を寄せ付けない物質を出したりすることがわかってきました。これは、マイクロ波を浴びた植物が軽いストレスを感じ、子孫を残すために成長のスピードを速め、外敵から身を守ろうとする防御機能があらかじめ働いたためです。
DNAの組み換えなどの影響が出ないこともわかっており、特に食用植物の栽培にうってつけです。植物の状態はいつ、どうやって、どの程度のマイクロ波を種や苗に当てるかによって違ってきます。今後はAI(人工知能)なども利用しながら、理想的な生育となる当て方を解明していくことになるでしょう。
全く新しいものを作り出す
植物に限らず、マイクロ波の利用は化学や生物、環境、物理などに関わる分野で、これまで不可能と思われていたことが現実になったり、全く新しい「ものづくり」を省エネルギーでできたりするかもしれません。
マイクロ波は解明されていないことが多い研究分野ですが、日本が世界を先導しています。さまざまな産業学問分野が一体となって研究を行い、世界に誇れる技術として発展することが期待されます。
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先生情報 / 大学情報
上智大学 理工学部 物質生命理工学科 准教授 堀越 智 先生
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