天文学とナノ粒子を結びつけると、太陽系が見えてくる
ナノ粒子の視点から宇宙ダストを解析
宇宙空間には「宇宙ダスト」という微粒子がたくさん存在しています。超新星爆発などで宇宙空間にばらまかれたガスが冷える過程で生成したもので、サイズは100ナノメートル以下と、もの作りで利用されるナノ粒子と似ています。そこで、天文学とナノ粒子の結晶成長などの研究を結びつける学際的研究が生まれました。ナノ粒子のでき方というミクロな視点から宇宙ダストの生成過程を再現すれば、太陽系の惑星が誕生した順序や天体の移動など、マクロな研究にもつながるのです。
隕石は宇宙からの手紙
宇宙ダストには金属や炭素、酸化物などの成分を持つものだけでなく、氷のダストもあります。いずれかの成分に焦点を絞ってデータを取る、ピンポイントの研究も進んでいます。世界で初めて人工雪を降らせた物理学者の中谷宇吉郎は、雪の形から上空の気温と湿度を知ることができることを示して、「雪は天からの手紙」という名言を残しています。隕石(いんせき)は宇宙ダストを取り込んで運んでくることから「宇宙からの手紙」といえます。例えば宇宙ダストは、太陽の誕生とともに熱せられて蒸発し、その後冷えて固体になります。この仕組みは水蒸気から雪ができるのと同じです。すなわち、雪の結晶と同じように、宇宙ダストを調べれば太陽系が誕生した46億年前の環境がわかってきます。
「その場観察」と実験機材の開発
こうした研究に欠かせないのが、実物を見ることです。透過電子顕微鏡を使って物質の生成過程などを見る「その場観察」は非常に有効です。また、観察するデータを得るため、実験に最適な機材を開発することも重要です。例えば無重力下での実験で宇宙ダストのでき方を再現するには、ロケットなどに搭載する機材が必要になります。
原子や分子がどのように集まってナノ粒子ができるのかを調べることは、さまざまな物理現象の理解につながる基礎研究で、半導体や薬、アイスクリームなど、あらゆる分野の材料や製品作りに応用できます。
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先生情報 / 大学情報
北海道大学 低温科学研究所 共同研究推進部 准教授 木村 勇気 先生
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宇宙雪氷学、低温ナノ物質科学、自然科学先生が目指すSDGs
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