折り紙の技術と最先端のテクノロジーで生み出す立体の細胞

折り紙の技術と最先端のテクノロジーで生み出す立体の細胞

より生物の細胞に近い3次元の立体細胞の培養

通常、細胞を培養するときは平面のプレート上で行うため、細胞自体も平面状に培養されます。しかし、生物の体は基本的に3次元の立体構造なので、2次元の平面で培養された細胞は実際の生物内の細胞とは性質が異なってしまうことが多々あります。その問題を解決するために、折り紙の技術を用いることで、実際の細胞が生きている環境に極めて近い3次元の条件で人工的に再現することができます。

細胞の牽引力を利用してさまざまな形に

細胞1つの大きさは約20~50μm(マイクロメートル)です。日本人の髪の毛の太さがおよそ100μmなので、ほぼ半分のサイズです。そんな小さいサイズの細胞をどうやって折り紙のように展開するのでしょうか。
細胞を折り紙のように折るときは、細胞自体が持つ牽引(けんいん)力を利用します。隣り合ったプレートの境界にまたがるように平面培養された細胞は、プレートから剥がれると細胞の牽引力で自然と丸まってしまいます。この牽引力を利用して、プレートの形や展開図を変えることで、任意の立体にすることができるのです。現時点の技術では、あまり複雑な形にはできませんが、立方体やサッカーボール状、チューブ状の形なら再現が可能です。

新薬の開発、臓器移植などに役立つ立体細胞

立体で培養した細胞は創薬などの研究に役立ちます。新薬を開発するときは細胞を使って実験を行いますが、2次元の平面で培養した細胞と違い、立体的に培養された細胞は実際の細胞に近い性質となるため、効果をより正確に測定することができます。また再生医療の分野では、自分の細胞を3次元に培養して臓器を作ることで拒否反応の少ない安全な臓器移植が可能になります。
日本に古くから伝わる折り紙と最先端の医療技術を組み合わせることで、さまざまな医療分野に応用の利く立体的な細胞を培養するこの研究は、大きな可能性を秘めているのです。

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北海道大学 高等教育推進機構  特任准教授 繁富(栗林) 香織 先生

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生体医工学

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自分が楽しいと感じることに精一杯取り組んでください。たとえ何か失敗をしたとしても、その経験は後の成功に結びつくはずです。大学受験では失敗もありましたが、人やチャンスに恵まれてその後、結果を残すことができました。大学院の博士課程では大学発のベンチャー企業を立ち上げました。
海外だけでなく、日本でも今後は研究者と経営者の二足のわらじを履くキャリアが一般的になるでしょう。目の前にあるチャンスを逃すことなくつかみ、自分の道を自分で切り開ける人間になってください。

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北海道大学は、学士号を授与する日本最初の大学である札幌農学校として1876年に創設されました。初代教頭のクラーク博士が札幌を去る際に学生に残した、「Boys, be ambitious!」は、日本の若者によく知られた言葉で本学のモットーでもあります。また、140余年の歴史の中で教育研究の理念として、「フロンティア精神」、「国際性の涵養」、「全人教育」、「実学の重視」を掲げ、現在、国際的な教育研究の拠点を目指して教職員・学生が一丸となって努力しています。