DNA分析で明らかになった、北海道のヒグマのルーツとは?

DNA分析で明らかになった、北海道のヒグマのルーツとは?

日本では北海道にしかいないヒグマ

日本国内には、ヒグマとツキノワグマという2種類のクマが生息しています。このうちヒグマは、日本では北海道にしかいません。縄文時代には本州にもヒグマがいたことが化石で明らかになっていますが、その後の気候の温暖化や、広葉樹林に適応できなかったことなどが原因で、本州のヒグマは絶滅したと考えられています。

北海道のヒグマの三重構造

北海道のヒグマには、道南地方、道東地方、そして道央・道北地方の3つの地域で、それぞれ異なるルーツをもつ集団が存在しています。このことは、北海道に生息するヒグマのミトコンドリアDNAの分析によって判明しました。この特徴的な分布は「北海道ヒグマの三重構造」とよばれ、かつてヒグマの集団が、異なる時代に3度にわたって北海道に移動してきたことを示しています。
地質などの関係で北海道にはヒグマの化石がほとんど残っておらず、3つの集団の祖先たちがやって来た年代を化石から推測するのは困難でした。一方、世界各地に生息しているヒグマのミトコンドリアDNAと比べることで、北海道の3つの集団と同じ祖先に属するヒグマの集団がそれぞれわかり、北海道のヒグマのルーツを探ることが可能になったのです。

ヒグマはいつ北海道に来たのか

ヒグマのもともとの故郷と考えられているのは中央アジアで、そこから北半球の各地に生息地域を拡大させていきました。北海道の道南地方のヒグマは、北米のロッキー山脈付近のヒグマと同じルーツをもち、約26万年前に別れて北海道に来たと推測されています。道東地方のヒグマは、北米の東アラスカ付近のヒグマと同じルーツをもち約16万年前、道央と道北地方のヒグマは、西アラスカやシベリア大陸のヒグマと同じルーツをもち約5万年前に北海道に移ってきたと考えられています。
DNAの分析による研究は、動物地理学の分野で新しい可能性を切り開きました。生物の進化と多様性の歴史を理解することは、私たち人間のこれからのあり方を考えるうえでも、大切な手がかりになるでしょう。

参考資料

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北海道大学 理学部 生物科学科 教授 増田 隆一 先生

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メッセージ

高校での勉強とは、いろいろな学問のバックグラウンドにある基礎的な知識を学ぶことだと思います。しかし大学では、それぞれの学問分野で何がまだ明らかになっていないのか、何を解明すべきなのかをよく考えた上で、自分自身の興味や意志に基づいて研究に取り組んでいくことが必要です。そして、実際に大学で研究をするときには自分一人だけで考え続けるのではなく、先生や先輩、同級生などとのコミュニケーションを大切にしながら、共に研究を深めていきましょう。

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北海道大学は、学士号を授与する日本最初の大学である札幌農学校として1876年に創設されました。初代教頭のクラーク博士が札幌を去る際に学生に残した、「Boys, be ambitious!」は、日本の若者によく知られた言葉で本学のモットーでもあります。また、140余年の歴史の中で教育研究の理念として、「フロンティア精神」、「国際性の涵養」、「全人教育」、「実学の重視」を掲げ、現在、国際的な教育研究の拠点を目指して教職員・学生が一丸となって努力しています。