風をコントロールする「空気力学」で、乗り物を「デザイン」する
300~400トンを持ち上げる「風」の力
普段は自転車でスイスイ走れる道なのに、向かい風が強い日は前に進むのがとてもキツかった、という経験はありませんか。目には見えない「空気」ですが、ぶつかる速度の二乗に応じて抵抗力も大きくなります。その力を翼の形によって浮き上がる力「揚力」に変え、空を飛べるようにしたのが飛行機です。ジャンボジェット機の場合、300~400トンの機体が揚力によって持ち上がるのですから、風の力がいかに大きいかがわかるでしょう。「空気力学」は、風の流れを整えて抵抗を小さくしたり、航空機が安全に飛べるようにする技術を研究する学問領域です。
求められるすべての条件を、高次元で融合
抵抗が小さいほど少ないエネルギーで物体を動かせますから、1970年代の「オイルショック」の頃から、世界中の自動車メーカーが、空気抵抗を減らす研究に力を入れるようになりました。空気抵抗を10%減らすごとに、燃費が約3%良くなると言われています。「たった3%?」と感じるかもしれませんが、燃費性能を上げる研究は、ネジ1本を軽量化するレベルまで進んでいるので、1%向上させるだけでも大変なのです。しかも自動車の場合、デザインが不格好になったら魅力が薄れますし、価格が大幅に上がるような素材を使うと売れなくなるでしょう。エンジンなどの冷却効果も考えねばなりませんし、ハイスピードで走るスポーツカーなら、スリップしにくいようダウンフォースでタイヤの接地力を上げる風の使い方も考えねばなりません。さまざまな条件を高い次元で融合させる技術が必要なのです。
空気力学は、「風使い」の学問
今後は、さらに空気抵抗の低いデザインが採用されていくでしょう。全世界では膨大な数の自動車が走っていますから、わずか数%の燃費性能向上でも、ものすごい量のエネルギー節約につながります。風の流れと力とをコントロールする「風使い」の学問は、環境分野においても社会貢献できる学問なのです。
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先生情報 / 大学情報
久留米工業大学 工学部 交通機械工学科 教授 東 大輔 先生
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