小児の理学療法と、その土台となる運動発達の評価法
求められる小児を対象とする理学療法士
病気やケガをした人、高齢者やアスリートを対象とすることが多い理学療法ですが、実は今、小児の理学療法が注目されています。低体重児や早産などでNICU(新生児集中治療室)に入る赤ちゃんのほか、乳幼児や小中学生でなんらかの障がいや発達障がいのある子どもが増えているのです。ですが、小児を対象とする理学療法士はまだ少数なのです。
小児の運動発達の評価法が不可欠
日本には、これまで運動発達の度合いを測るための評価法は、主に心理学などに基づいたものしかありませんでした。そこで、理学療法の視点に立った評価法の確立が求められ、着目されたのは、カナダの理学療法士らによって開発されたAIMSという運動発達評価法です。運動発達の遅れの早期発見や、健常児と障がい児を見分けることに有効であるといわれています。ただし、海外の評価法を日本でそのまま使うことはできません。子どもの育て方や文化が違うため、日本の乳幼児の評価に適しているか検証が必要だからです。
検査方法は、簡単にできて信頼性や妥当性が高いものが良いとされます。AIMSは、20~30分の観察によって実施でき、経験が少ない人でも比較的正確な結果を得られます。また、保護者が理解しやすく受け入れやすいといったメリットがあり、小児理学療法の現場で活用されつつあります。
サポートが必要な小児を支援する土台に
実際には、生後0カ月から18カ月の乳幼児を対象に、寝返りや座る、つかまり立ちするといった行動を観察することで、運動の遅れなどを客観的に評価します。病気や障がいなどと診断されない、発達に遅れのある子どもたちに対しても有効です。乳幼児だけでなく、児童生徒の評価法の開発も求められています。発達障がいと知的障がいの両方があるなど、さまざまなケースを評価できる方法が確立されれば、的確にサポートできるようになるでしょう。
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神戸国際大学 リハビリテーション学部 理学療法学科 教授 上杉 雅之 先生
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