脳梗塞で失ったバランス機能を取り戻すリハビリとは
バランスが保てない「左半側空間無視」
脳梗塞などが原因で、大脳の右半球の脳細胞がダメージを受けると、左側の空間を認識できない「左半側空間無視」という症状が現れることがあります。この症状がある人は、左側にあるものが認識できないだけでなく、身体のバランスも正常に保てなくなります。そのため、まっすぐに立つことが難しいだけでなく、座っている時も、身体が左側に傾いてしまうため、普通に座っていることができません。
身体のバランスを回復させるためには、まず、座イスなどを左側が高くなるように設定して座り、左側に倒れないようにします。この状態をしばらく続けることで、バランスの取れた状態を脳に記憶させます。さらに、脳梗塞の回復にともない、バランス感覚が戻ってくると、今度は、逆に左側を下げるように傾斜をつけて座ることで、身体自体がバランスを取るよう体幹をトレーニングします。
自覚症状の確認と客観指標で症状を評価
このように、回復の度合いや、患者さんの能力によっても必要な理学療法は異なるため、適切な療法を行うには、まず症状を正しく評価することが大切です。評価の方法は、患者さんの自覚症状を確認する方法と客観的な指標を使う方法の2つがあります。客観指標には、重心計を用いたり座っている姿を動画で撮影し、身体の揺れ具合を数字で示すといった定量的な評価と、介助者が観察して回復度を段階で評価する定性的な評価があります。
残った細胞を活発化するためのリハビリ
脳梗塞による身体のまひなどの後遺症は、脳細胞が死んでしまうために引き起こされます。しかし、脳細胞には、セーフティ機能があるため、たとえ一部の細胞が死んでしまっても、ほかの細胞がその機能をカバーすることから、リハビリで脳細胞を活性化させられれば、また正しい動作ができるようになります。そのためには、症状の正しい評価と適切なリハビリのプログラムの実施が重要になるのです。
※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。
※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。