「社会にいいことをした気持ち」を数理モデルで表すと?
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フェアトレードが身近に
「フェアトレード」とは、途上国の原料や製品を適正な価格で取引することで、それにかかわる生産者や労働者の生活改善と自立をめざす仕組みです。スーパーでもフェアトレード製品のチョコレートやコーヒーなどを見かけることが増え、生活に身近なものとなってきました。フェアトレードの製品を買うとき、価格がやや高いと感じるかもしれませんが、社会に対して何かいいことをしたような気持ちや、自分の行動に対する満足感をおぼえる人もいるでしょう。
フェアトレードが存在するためには気持ちが大切?
フェアトレードが持続的に存在するために大切なものはなんでしょうか? これを数理モデルで理論的に示した研究があります。企業がフェアトレードに参加した場合に生産者が得る賃金などを、「ナッシュ交渉解」や「クールノー競争」といった経済学の理論をもとに作られた数理モデルに当てはめるもので、意外なことが明らかになりました。それは、一見不可欠と感じられる「買う側の、社会にいいことをしたい気持ち」がなくてもフェアトレードは成立するというものです。ただし、その気持ちがフェアトレードにまったく寄与しないわけではありません。その気持ちが強いほど、生産者へ高い賃金がもたらされることも示されました。
理論研究がもたらすもの
さらに明らかになったのは、フェアトレードが途上国の生産者だけでなく、買う側の生活の向上にも寄与するという点です。ポイントは、フェアトレード製品とフェアトレードではない製品が市場に流通することで進む「製品の差別化」です。消費者にとっては購入の選択肢が広がり、「選ぶこと」に対する満足感が高まるのです。これは、フェアトレードが途上国と先進国の双方にとって有益な取引システムであることを示唆します。これらフェアトレードのメカニズムが数理モデルを使って示されることで、フェアトレードが有益であることの説得力が高まり、理論に基づいたさらなる実証研究にもつながっていくのです。
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![神戸国際大学 経済学部 経済経営学科 講師 ストレリチェンコ オリガ 先生](https://yumenavi.info/img_p/P016020009strelc.jpg )
神戸国際大学 経済学部 経済経営学科 講師 ストレリチェンコ オリガ 先生
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