緊急度の判断基準って何? 救急車不足を解消するために
救急車が足りない
現在、日本では救急車の要請件数が増え、社会問題になっています。中には救急車を使う必要がないのに要請されることもあります。限りある車両や人材を最大限に活用するためには、救急車を呼ばなくても済むケースを見極めなければなりません。しかし、一般の人には判断が難しいため、医療従事者が勤務している高齢者施設などからの救急車の要請件数を抑えられないか、検証が行われています。
高齢者施設と救急車
調査対象とした地域全体の高齢者搬送の内訳を見ると、高齢者施設からの搬送が約70%を占めています。また、高齢者施設からの救急搬送の内訳を見ると、約20%は緊急性が低い理由によるものです。一方、一般家庭からのそれは約1%にとどまります。つまり高齢者施設では緊急性が低くても救急車を呼ぶ傾向が見られるのです。
高齢者施設からの搬送には必ず医師か看護師の判断が求められますが、救命救急の現場とは異なる観点で判断しているケースが多いことがわかりました。例えば高齢者施設で1週間発熱が続いている人がいたため救急車を呼んだとします。しかし救急救命の観点では、1週間同じ症状が続いている時点で緊急性が高くないため、救急車を呼ぶ必要はないと判断できます。
救急車の要請を判断する尺度のズレ
救急車を要請するか否かを判断する基準は主に2つあります。1つは「重症度」で、病気やけががどれだけ重いのかという尺度です。しかし救急救命では、「緊急度」という別の尺度で判断します。緊急度は、どれだけ急いで治療をしなければ命に関わるか、という時間的な観点から見た尺度です。救急救命士は現場に到着すると、意識レベルや呼吸の回数といったバイタルサインによって、緊急度を判断します。その結果、救急搬送しなくても問題ない場合を緊急度が低いと見なします。一方、高齢者施設では主に重症度から救急搬送の要請を判断している傾向があります。こうした基準のズレによって救急車の要請件数が多くなっている可能性があり、ここに問題のカギがあると考えられるのです。
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帝京大学 医療技術学部 スポーツ医療学科 救急救命士コース 講師 高山 祐輔 先生
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