誰もが納得し、自発的に納税できる仕組みを考える-租税法研究-
納税の「公平性」と「公正性」
社会の公共機関やインフラは、税金によってつくられ、運営されています。税金は、個人や企業などが所定の手続きを経て支払い、その運用は、国や自治体によって適切に行われることになっています。消費税をはじめ、税金にはさまざまな種類がありますが、納税者は定められたルールに従ってそれら税金を納めます。多くの納税者がそのルールを守り、自発的に納税する社会を実現するためには、税の「公平性」と「公正性」が守られていなければなりません。
負担の公平と手続の公正
税の「公平性」とは主に負担の面での公平を意味し、誰もに公平な負担を求めるために税法は明文化されていますが、その条文解釈は難しく、納税者と、税を徴収する公的機関とでその解釈が分かれ、裁判に発展することもあります。公平な税負担を実現する役割は、最終的には裁判所が担います。
また、負担の公平と並んで重要なのが手続の「公正性」です。その手続的公正のためには、誰もが納得できる手続ルールに則り、納税者が丁寧かつ敬意をもって扱われなければなりません。例えば税務署が企業に税務調査に入る場面でも、公正な手続と丁寧な対応によらなければ、納税者の税務署に対する信頼を害することになります。
納税者権利憲章
海外に目を向けてみると、OECD(経済協力開発機構)加盟国の大部分は、「納税者権利憲章」という、納税者を公正かつ公平に扱うための手続的なルールが設けられています。この憲章を守る国では、納税者はその立場を尊重され、丁寧な対応を受けることにより、自発的に納税義務を果たすことが期待されています。
法学の中でも、税金に関する法を専門とする「租税法学」という分野では、こうした納税の「公平性」「公正性」についても研究しています。租税法の成り立ちや納税者の心理、海外事例との比較といった視点を交えた研究を、誰もがルールに納得し、自発的に納税できる仕組みづくりへとつなげることを目的としており、今後の発展が期待されます。
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