講義No.12927 経済学 法学

誰もが納得し、自発的に納税できる仕組みを考える-租税法研究-

誰もが納得し、自発的に納税できる仕組みを考える-租税法研究-

納税の「公平性」と「公正性」

社会の公共機関やインフラは、税金によってつくられ、運営されています。税金は、個人や企業などが所定の手続きを経て支払い、その運用は、国や自治体によって適切に行われることになっています。消費税をはじめ、税金にはさまざまな種類がありますが、納税者は定められたルールに従ってそれら税金を納めます。多くの納税者がそのルールを守り、自発的に納税する社会を実現するためには、税の「公平性」と「公正性」が守られていなければなりません。

負担の公平と手続の公正

税の「公平性」とは主に負担の面での公平を意味し、誰もに公平な負担を求めるために税法は明文化されていますが、その条文解釈は難しく、納税者と、税を徴収する公的機関とでその解釈が分かれ、裁判に発展することもあります。公平な税負担を実現する役割は、最終的には裁判所が担います。
また、負担の公平と並んで重要なのが手続の「公正性」です。その手続的公正のためには、誰もが納得できる手続ルールに則り、納税者が丁寧かつ敬意をもって扱われなければなりません。例えば税務署が企業に税務調査に入る場面でも、公正な手続と丁寧な対応によらなければ、納税者の税務署に対する信頼を害することになります。

納税者権利憲章

海外に目を向けてみると、OECD(経済協力開発機構)加盟国の大部分は、「納税者権利憲章」という、納税者を公正かつ公平に扱うための手続的なルールが設けられています。この憲章を守る国では、納税者はその立場を尊重され、丁寧な対応を受けることにより、自発的に納税義務を果たすことが期待されています。
法学の中でも、税金に関する法を専門とする「租税法学」という分野では、こうした納税の「公平性」「公正性」についても研究しています。租税法の成り立ちや納税者の心理、海外事例との比較といった視点を交えた研究を、誰もがルールに納得し、自発的に納税できる仕組みづくりへとつなげることを目的としており、今後の発展が期待されます。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。

先生情報 / 大学情報

神戸国際大学 経済学部 経済経営学科 准教授 金山 知明 先生

神戸国際大学 経済学部 経済経営学科 准教授 金山 知明 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

租税法学、租税心理学

メッセージ

あなたは高校や大学を経て、将来は社会人となって社会を支えていきます。社会人になるということは、収入に応じて税を負担する納税者になるということです。自分に課される税金はどのような考え・ルールのもとで設定され、どのような手続きを経て支払い、支払った後はどのように運用されているのでしょうか。これらを知ることは、国の運営に参加することにもつながる重要な意味をもっています。大学ではぜひ税や、税を考える上で不可欠な会計についても学び、その成り立ちや現在の制度全体についての理解を深めてほしいです。

神戸国際大学に関心を持ったあなたは

神戸国際大学は経済学部(経済経営学科、国際文化ビジネス・観光学科)とリハビリテーション学部(理学療法学科)の2学部3学科の大学です。少人数制の学びが特徴で、教員との距離も近くきめ細かな指導を受けることが出来ます。
経済学部では英語・経済・経営・観光・ホテル・ブライダルなど卒業後の進路を考えた多彩なコースで学ぶことができます。
リハビリテーション学部では、少人数担任制でゼミの学生数は約4名と学びやすい環境です。また、臨床に出ている現役の理学療法士の教員が14名在籍し実践的な指導を行っています。