形のない動物の心理を生物学的に理解する
すべての動物に共通な心理は情動
脊椎動物の脳や構造、遺伝子を調べると、人間も含めて、共通なものが多いことがわかってきました。しかし、実際にそれが生物の行動や心理にどのように反映しているかは、それほど明らかになってはいません。そこでまず、心理に関して共通なものが何かを考え、そこにどういうメカニズムがあるのかを明らかにする必要があります。心理と言っても、言葉で伝えることができる感情は、人間以外の動物は伝える能力がないのでここでは対象になりません。共通にあるのは、恐怖のような「情動」と言われるものです。
形のない心理をどうやって確認するか
なぜそれが共通かと言えば、身体の反応として示すことができるからです。私たちは、恐怖にさらされるとドキドキしたり冷や汗をかいたりします。ほかの動物も心電図を調べるとパルスに変化が生じます。おそらく、恐怖は生存と深く関わっているので、強い身体反応を示すのでしょう。ほかにも喜びのような情動がありますが、そこまで強い身体反応は示しません。恐怖は、この研究にふさわしい材料です。また、心理を実体としてとらえる方法は、心電図のほかに脳の神経細胞(ニューロン)を観察する方法もあります。この方が、より詳細な心理メカニズムが明らかになります。
生物心理学の目標は人間の心理を理解すること
この研究では、生きている動物を対象とします。死んでしまうと、心理を観察することができなくなるからです。また、動物は魚の脳を研究材料にします。魚の脳の神経細胞は、例えばキンギョの場合約1億個あります。人間は、その約1000倍と言われています。小さな脳であれば、全体像をとらえやすいというメリットがあります。
魚の脳によって心理が働くメカニズムがわかれば、人間も共通なので人間の情動も理解できるようになります。この研究は生物心理学と言われますが、最終的な目標は感情を含めた人間の心理を理解することです。
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先生情報 / 大学情報
広島大学 生物生産学部 生物生産学科 准教授 吉田 将之 先生
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