地球環境と生態系を支える「土」の話
土壌学とは何か
土を研究する学問を、「土壌学」と言います。大学の農学部の多くは、食料を安定的に得るために、この土壌学の分野から始まりました。
土壌と呼ばれるのは、平均すると地表からわずか20センチ程度の層です。地球をミカンに例えるなら、表面に塗られたワックスほどの厚さでしかありません。土を構成するのは、無機物である砂や粘土と微生物などの生物、そして微生物によって分解されてできた腐植(黒っぽい色をした有機物)です。土壌は無機物だけでなく、微生物や昆虫、ミミズなど生物の活動によって育まれるものなのです。
多様な役割を担う土壌
土には、生物のすみかや水分を保持する役割があるほか、窒素・リン・ミネラルなどの養分と水を植物の根に運んだり、落ち葉や死んだ生物を分解したりする役割があります。
土壌の腐植に含まれる化学物質のうち、水に溶けるものは、やがて川や湖、海に流れていきます。「森林が破壊されると魚が採れなくなる」と言われますが、これは、植物が育つのに必要な養分と鉄分が腐植に含まれているからです。鉄分は葉緑体の形成に必要で、不足すると光合成が十分できません。森林が豊かになり、養分と鉄分を含んだ水が安定的に川や湖、海にも流れ込むことで、魚のエサとなるプランクトンもよく育ちます。土は、生態系の基盤なのです。
地球環境の要(かなめ)
近年、土壌と環境問題の関わりが注目されています。土壌は、内部にCO₂の元となるCを貯蔵して地球上のCO₂バランスを保ったり、酸性雨など生物に変化を与える現象があったりしても、急激には影響をおよぼさないクッションの働きがあります。
土壌環境が崩れると、地球温暖化は加速していきます。また化学物質で土壌が汚染されると、私たちの健康に深刻な被害をもたらすと考えられます。土壌にはさまざまな年代の植物や生物が堆積しているので、そこに含まれる化学物質の量や質を割り出すことは簡単ではありませんが、影響を解き明かそうと研究が進められているのです。
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先生情報 / 大学情報
神戸大学 農学部 生命機能科学科 応⽤機能⽣物学コース 教授 藤嶽 暢英 先生
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土壌学先生が目指すSDGs
先生への質問
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