ロケット打ち上げはなぜ失敗した? 原因はターボポンプの中に
打ち上げ失敗の原因は?
日本の液体ロケットH-IIの8号機が1999年に打ち上げに失敗しました。その原因はエンジンのターボポンプ内で発生する「キャビテーション不安定現象」でした。液体の圧力が下がり、気体になることをキャビテーションといいますが、そもそも流体は速度が増すと圧力が下がる特性を持っているため、高速回転するターボポンプ内ではキャビテーションを避けることはできません。しかしこの現象が激しく振動するとエンジンの破損や性能低下をまねきます。このキャビテーションの激しい振動現象がキャビテーション不安定現象と呼ばれています。
超高速回転ターボポンプの必要性
液体燃料ロケットのエンジンでは、タンク内の液体水素と液体酸素をターボポンプを使って高圧で高速の状態にして燃焼室に送りますが、このターボポンプの重量が増えると、ロケットに人工衛星などの荷物を載せられなくなります。そこで、ターボポンプは70cm程度のサイズで500トン以上の大型ロケットを飛ばす力を達成しなければなりません。高性能かつ小型・軽量化を実現するために、ターボポンプは1秒間に水素で700回転、酸素で300回転の超高速回転をしています。そのため、キャビテーションが発生してしまうのです。
打ち上げ成功のためのキャビテーション研究
そこでロケットを安全に飛ばすために、ターボポンプではキャビテーション不安定現象が発生しないような工夫をした設計が行われています。しかし、発生を抑制し、性能が十分出ていることを確認するために地上試験を繰り返す必要があり、ロケットの打ち上げコストが高くなってしまいます。よって、より良い抑制方法の研究や、コンピュータシミュレーションや実験を用いたキャビテーション不安定現象のメカニズム解明が試みられています。また、ターボポンプは将来水素社会が実現したときに役立つ可能性があります。液体水素の大量運搬にもポンプが必要になるからです。ロケット用ターボポンプの技術を応用し、産業用の水素ポンプを作る研究も始まっています。
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先生情報 / 大学情報
東北大学 工学部 機械知能・航空工学科(流体科学研究所) 教授 伊賀 由佳 先生
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