講義No.12191 生物学

サンゴのようでサンゴではない? 石になる海藻・サンゴモ類

サンゴのようでサンゴではない? 石になる海藻・サンゴモ類

石になる海藻

サンゴモという海藻を知っていますか。名前の通りサンゴに似ていますが、サンゴがイソギンチャクやクラゲの仲間であるのに対して、サンゴモは海苔の仲間です。海藻であるにもかかわらず体の約9割が炭酸カルシウムでできていて石のように硬くなるので、石灰藻とも呼ばれています。サンゴモは世界中の海に生息しており、近年の研究でそのユニークな特徴が明らかになってきました。

800年もの長寿命

サンゴモはサンゴとともにサンゴ礁を、さらにサンゴモだけの藻場をつくって海の生物が生息する場所を提供する生態的役割を担っています。サンゴモの藻場は砂地の海底にできます。砂地は、そのままでは生き物が住みにくい環境ですが、そこに球状のサンゴモが敷き詰められることによって様々な生き物が住みつき、ほかの海藻のシードバンクにもなります。また、石灰化しない海藻の寿命が1年から長くても数年程度なのに対し、サンゴモには800年以上という長寿命の種もあり、さらに化石として地中に残ります。炭酸カルシウムとしてサンゴモの体内に取り込まれた炭素は、光合成をして取り込んだ炭素に由来します。これが、その分解されにくさゆえに長期にわたって固定されるものと推定されています。

サンゴモ類へのアプローチ

サンゴモの研究では、現場での調査や採集のほか、組織切片をつくって形態を顕微鏡で観察することも行われます。またサンゴモの種類を特定するためには、DNAを抽出して遺伝子を解析して類縁関係を調べます。温暖化が進むと海水に二酸化炭素の溶ける量が多くなって海が現在より酸性になると予想されるため、将来の影響を調べる研究も行われています。
今後はサンゴモがつくる藻場の調査が検討されています。藻場に生息するサンゴモの種類や種類ごとの年間の成長速度、生成する炭酸カルシウムの量を調べ、その藻場での面積当たりの炭酸カルシウムの生産量を割り出すことができれば、地球の炭素循環に関するモデルに貢献できると考えられます。

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広島大学 生物生産学部 生物生産学科 准教授 加藤 亜記 先生

広島大学 生物生産学部 生物生産学科 准教授 加藤 亜記 先生

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多様性生物学(植物分類学、藻類学)

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