講義No.10850 酪農・畜産学

酪農現場を科学で救う! 乳牛のライフサイクルコントロール

酪農現場を科学で救う! 乳牛のライフサイクルコントロール

分娩・搾乳を繰り返す乳牛のライフサイクル

乳牛は、分娩(ぶんべん)して初めて乳を出すようになります。その後は常に乳を出すわけではなく、妊娠・分娩・泌乳を繰り返します。この乳牛のライフサイクルをいかにコントロールして健康で効率よく乳量を保つかが、酪農家にとっては重要です。

グレリン分泌を促す中鎖脂肪酸

次の分娩に備えて搾乳を休ませる時期を乾乳期と呼びます。この時期に牛が太りすぎると分娩時の事故が増え、栄養が足りなければ乳量が減ります。乳量を増やすには成長ホルモンのコントロールが有効であり、その方法について研究が進められました。そこで着目されたのが、牛の成長ホルモンを促進するペプチドホルモン「グレリン」です。グレリンは胃から分泌されるため、エサを工夫することでコントロールが可能です。研究の結果、中鎖脂肪酸を乳牛に摂取させるとグレリンの分泌が促進されることがわかりました。合わせて、中鎖脂肪酸とグレリンの働きを応用し、子牛の成長ホルモンコントロールに欠かせない粉ミルクも開発されました。

牛舎の照明のコントロールも鍵

乳牛の飼育管理では、照明のコントロールも大切です。乳牛の個体の成長や乳量増加によいのは、明るい時間が16時間、暗い時間が8時間とされています。これには光の波長により分泌が変化する睡眠ホルモンと呼ばれる「メラトニン」が関係します。メラトニンは成長ホルモンなどの内分泌機能を変化させるもので、メラトニンと乳腺の発達は関係しており、乳量が変化します。単純にメラトニンが高まれば乳量が増えるというわけではなく、分泌を促す時間帯や時期のよしあしもあります。そのため、照明によって光周期(一日の明暗サイクル)をうまくコントロールすることが必要なのです。
また、牛にとってもブルーライトがよくないことがわかりました。牛舎の照明によく使われる白色LEDを長く照射するとメラトニン分泌を抑制し、特に成長期の子牛には悪影響を及ぼすのです。そこで現在は有機LEDを使った照明のコントロールを酪農現場で実践する研究が進められています。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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先生情報 / 大学情報

広島大学 生物生産学部 応用動植物科学プログラム 教授 杉野 利久 先生

広島大学 生物生産学部 応用動植物科学プログラム 教授 杉野 利久 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

農学、畜産学、獣医学、動物栄養学

先生が目指すSDGs

メッセージ

動物生産で飼育するウシ,ブタ,ニワトリなどの動物たちは産業動物です。同じ生き物の研究でも、理学の生物学と農学が異なるのはそこで、目の前に農家さんたちがいて、経済に直結しているということです。
私が研究する乳牛栄養学も酪農現場が抱える問題や課題、困っていることを足がかりにして自分が研究したことが、酪農家さんの役に立ち、研究の成果がスピーディーに現場に生かされるのも大きな特徴です。酪農がより発展し、大変な仕事が少しでも楽に、そして牛にとってもよい環境になるよう、私たちは日々研究を行っています。興味があるならぜひ一緒に学びましょう。

先生への質問

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広島大学は社会に貢献できる優れた人材を育成し、科学の進歩・発展に貢献しつつ、世界の教育・研究拠点を目指す大学です。緑豊かな252ヘクタールという広大な東広島キャンパスを抱え、また、国際平和文化都市である広島市内等のキャンパスを含め、12学部、4研究科、1研究所、大学病院並びに11もの附属学校園を有しています。 新しい知を創造しつつ、豊かな人間性を培い、絶えざる自己変革に努め、国際平和のために、地域社会、国際社会と連携して、社会に貢献できる人材の育成のために発展を続けます。