看護師は医療界ではどんな存在? 専門職連携教育の重要性
職種によってアプローチが違う
看護学は患者を手助けする方法を学ぶ分野です。そのため患者が持つ強みに着目してサポートを試みます。ある研究では高齢者のみで生活する世帯を対象に聞き取り調査を行い、高齢者が他者のために自分の知識や経験を役立てる力など、強みの要素がわかりました。看護の現場でも高齢者の強みを生かした接し方が意識されています。
一方、医師は診断や治療が仕事なので、必然的に、患者が持つ病気などの弱みに焦点を当てます。どちらがいい悪いではありません。どの専門職も患者の健康のために仕事をするという目的は共通していますが、患者に対する向き合い方は職種によって異なるのです。
専門職連携教育でチーム医療を学ぶ
より充実した医療サービスを提供するために、医師や看護師、薬剤師などさまざまな職種の連携が重視され始めています。そこで2000年代頃から専門職連携教育(IPE)が盛んになってきました。大学でも、異なる学部の学生がチームを組み、現場での連携に必要なスキルを学びます。特に重視されているのが、医療を受ける患者に対する共通理解です。例えば、看護が「患者の強みに着目する」ことを他の職種が認識すれば、お互いに補い合って新たなアプローチを考えることができます。
医療職全体の意識改革が必要
専門職はこれまで各々別々に社会化されてきました。社会化とは、個人が特定集団の文化などに適合することです。その結果、知らない別の社会への偏見が芽生え、ときには対立や上下関係を生む場合がありました。IPEは異なる専門職の文化を対等に知ることで、医療職全体での社会化をめざしています。
人は、無意識のうちに自分のおかれた社会の文化に根付いた言動をしがちです。例えば、看護師は医師に劣るという意識が根付くように社会化されると医師の後ろに立って従ってばかりの看護師が育ちがちです。連携に必要なスキルを教えるだけでなく、現場も含めた医療職全体の意識を変えることが、IPEを成功させるためには重要なのです。
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千葉大学 看護学部 准教授 井出 成美 先生
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