「患者中心の医療」を実現する専門職連携教育(IPE)の理念と実践
患者の生き方を支援する医療
「患者中心の医療」とは、患者がその人らしく生きられるように支援する医療やケアを指します。治療を受けるのは患者なのですから、医療が患者中心なのは当たり前のことと思えますが、日本の医療現場では必ずしも「患者中心」とは言えませんでした。
例えば、医師は病気の治療だけに集中しがちで、患者がどのような生活を望んでいるのかについて、関心を持たないことも少なくありませんでした。これでは、病気は治ったとしても、治療期間中に体が弱ってQOL(生活の質)が著しく低下し、社会復帰が難しくなることもあり得ます。それではとても「患者中心の医療」とは言えません。
不可欠な「チーム医療」の考え方
そこで考えられたのが、多職種が連携する「チーム医療」です。医療現場には20以上の専門職があり、それぞれが高い専門性を持っています。彼らがチームとして、それぞれの専門領域で高度な能力を発揮すれば、さまざまな側面から患者を支援することができます。例えば、治療中のQOL低下を防止するプログラムを作成することもでき「患者中心の医療」に近づけられるはずなのです。
専門職連携教育の研究と実践
1990年代から、世界中で医療の専門職が連携するためにはどうしたらよいのかについての研究が始まりました。それが、専門職連携教育(Inter Professional Education:IPE)の研究です。実際に、医療現場で多職種が連携しようとすると、言葉さえ共有できないこともありました。専門用語がそれぞれの領域で異なるからです。また、医療に対する価値観や、患者へのアプローチの仕方にも大きな違いがありました。そうした違いを乗り越えるためには、コミュニケーションやプレゼンテーションの能力、正しい職業観や人間性の醸成などが不可欠です。学生の頃から多職種がチームとして互いに学びあい、専門性を高め合って患者に向き合うことができるような教育プログラムとしてIPEプログラムの開発、研究、実践が行われています。
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先生情報 / 大学情報
千葉大学 医学部 准教授 朝比奈 真由美 先生
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