「子どものケア」だけではない、小児救急の現場とは
待合室から始まる小児救急の看護ケア
小児救急の現場では、子どもの重症度や緊急度に応じた適時対応を可能にする院内トリアージが標準的な医療として普及しています。例えば、トリアージ中のある場面で、看護師が、待合室で熱のある乳児の服を脱がせながら、家族と会話をしています。体温調節機能が未発達な乳児は、着過ぎによって熱がこもった状態になっていることがあり、「着ているものを減らした方が楽に過ごせて、熱の上がりも少なくて済む」ことを家族に伝えているのです。小児救急における院内トリアージの研究では、看護師は共通して、観察したり触れたりすることで緊急性の高低を判断しながら、子どもに対する直接的なケアの提供や家族に対する子どもへのケア方法の伝達などを、同時に行っていることが分かりました。
病院から地域へ、広がる看護のフィールド
緊急性よりも、家族が「心配して」小児救急医療にヘルプを求めていることがあります。その「心配」を減らすために、子どもが病気やケガをした時のことを事前にイメージしながら、どういうケアをすれば良いのか、親になる前から理解しておくことが、「その時」の助けになると考えられています。そこで、バーチャルリアリティー(VR)を使い、そういった場面の子どものケアを模擬体験できる素材開発に向けた研究が始まりました。この研究は、親や家族の自信を補強し、「医療にアクセスする手前の子育て支援」につながるでしょう。看護のフィールドは、今、家庭や学校などにも広がっています。
「子ども」をあらためて理解する
小児救急場面に限らず、小児看護で大切なのは、「子どもへの理解を深める」ことです。子どもであった経験を思い返すことは、おとなだけでなく若い学生も難しいのです。例えば、子どもの視野は、おとなに比べ縦横それぞれ狭くなっています。体験学習を通して、子どもの見え方を理解し、「話しかける時にはどのように工夫をすれば良いのか」などを考えながら、子どもの目線に合わせていくことが、子どもを尊重した看護につながっていきます。
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