講義No.12396 看護学

患者・国民のヘルスリテラシーを向上させる看護情報学

患者・国民のヘルスリテラシーを向上させる看護情報学

看護と情報

看護師には、患者の血圧を測ったり体を拭いたりといった業務だけでなく、科学的根拠に基づいて、その時点で最新かつ最良と思われる知識を患者やその家族に提供することも求められます。そのためにはまず患者をしっかりと観察し、医学的、心理的、社会的な問題をつきとめ、解決できる方法を探す必要があります。またその問題に関連する最新の研究成果などを調べ、その情報が本当に信じられるものかどうかを判断し、そこで得られた解決策を、患者とともに考える姿勢も求められます。こうした一連のプロセスにおいて役立てられる学問が、看護情報学です。

患者のヘルスリテラシーを理解する

看護情報学の基礎となるのは、インターネットの情報検索や、そこで得た情報を正しく解釈し判断するといった「情報リテラシー」です。また患者が、どのようなデータをどのように情報化しているのか、つまり患者の「ヘルスリテラシー」を理解することで、その患者が持つ知識や考え方の偏り方、その問題解決のパターンを見いだすことができます。例えば情報の真偽を疑うことなく信じてしまう傾向がある患者には、情報の「疑い方」を補足説明する、またはパンフレットの内容が伝わっていないときは文字サイズを大きくする、音声付きの動画で説明する、といった対処にもつながります。

データ・情報・知識

今日では、インターネットを含む各メディアから大量の健康関連情報が発信されていますが、そのどれもが患者にとって有用なものであるとは限りません。医療者には、医療の専門家としての情報のとらえ方があり、そのとらえ方のエッセンスを患者に伝えることは、現代医療において重要なプロセスになっています。予防医療がますます重視され、また医療のデジタル化やIoTの普及が進められています。その中では、「データ」「情報」「知識」を看護に取り入れ、国民のヘルスリテラシーの向上、医療の効率性の向上に寄与する看護情報学に、ますます大きな期待が集まっています。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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先生情報 / 大学情報

岩手県立大学 看護学部 看護学科 准教授 遠藤 良仁 先生

岩手県立大学 看護学部 看護学科 准教授 遠藤 良仁 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

看護情報学、看護学

先生が目指すSDGs

メッセージ

一定の医学的知識を持ち、かつ患者や一般の方々にそれを伝えやすい立場にあるのが看護職であり、看護職の教育や、看護のあり方について考える学問が看護学です。
情報化が進む現代においては、看護学には従来の役割に加え、患者のヘルスリテラシー(=医学情報を正しくとらえる力)を向上させる「看護情報学」の重要性が高まりつつあります。特に今後は遠隔医療や、医療のデジタル化が加速することが予想されます。変わりゆく看護の未来に役立つ看護情報学は、まさに未来をつくる学問なのです。

先生への質問

  • 先生の学問へのきっかけは?
  • 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

岩手県立大学に関心を持ったあなたは

大学は「知識」を得る場であるだけではなく、「人生の目的」を考える場であり、これからの人生で自分は何をなすべきかを探求する場でもあります。人はそれぞれ固有の素質と能力を持っています。それをいかに見出し、育成していくかが教育の最大課題であると考えています。この大学での貴重な学習期間に、自己の能力と個性を伸ばし、適性を見出すことに努めてください。本学の教職員は、全力を挙げてこれに協力します。