高度な医療機器を操作し患者に寄り添う臨床工学技士
医療機器を操作する専門職「臨床工学技士」
医師や看護師と連携して医療機器を操作する専門医療職が、臨床工学技士です。臨床工学技士が取り扱う医療機器は、新型コロナの治療で使用されたエクモ(体外式膜型人工肺)や、人工呼吸器など、患者の生命維持に欠かせないものです。日本で腎機能が低下した30万人以上が受けている透析治療の機器も、臨床工学技士が操作します。臨床工学技士は、生命維持に関わる医療機器がトラブルを起こさず、正常に作動するように管理・操作するという重要な役割を担っています。
情報の標準化が医療格差を解消
医療機器の増加や進歩に伴い課題となるのが、機器の開発や使い方の標準化です。従来は研究機関や臨床施設でそれぞれ独自に策定されていましたが、実働の中から知り得た情報を集積して体系化し、そのエビデンスからガイドラインを作る「標準化」の研究が進んでいます。標準化により、高性能で安全性の高い医療機器開発が可能となります。また医療機器の操作面でも、操作技術の信頼性が高まります。この技術共有により、臨床工学技士の技能が平準化され、技術提供が偏在性をなくし、必要とされる医療技術に伴う機器の整備と安全使用により、医療の地域格差の解消にも繋がります。今後は、AIや自動化・ロボット化が進むにあたり、操作方法論の確立も必要になるでしょう。
患者に寄り添う臨床工学技士の未来
医療機器はどんどん進化しています。臨床工学技士が操作・管理する人工心肺は当初、人工肺の稼働時間が限られ、長時間手術では途中で人工肺の交換が必要でした。しかし現在では技術革新により長時間使用が可能となり、安全性も格段に高くなりました。心臓移植を待つ患者に装着される人工心臓の駆動装置は、以前は洗濯機ほどもある大きさでしたが、今はポシェットに収納できる大きさです。そういった生命維持装置は機能だけではなく、患者のQOL(生活の質)の向上に貢献します。患者の人生にいっそう寄り添うことになる臨床工学技士の仕事は、ますます重要なものとなります。
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先生情報 / 大学情報
滋慶医療科学大学 医療科学部 臨床工学科 教授 吉田 靖 先生
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