人口減少時代を生き残るための政策を「評価」するには?
人口が減ると何が起こる?
日本では、人口の減少高齢化が急速に進んでいます。戦後に人口を抑制する政策を採ったため、現在は若者が少なく、高齢者が極端に多いいびつな人口構成になっています。子どもが少ないため、子どもにかかる行政経費は少なくなりますが、高齢者のための医療・介護・福祉費などが増えているため、財政を圧迫しています。また、働く世代の人口(生産年齢人口)が減ると税収も減るので、道路や水道管の更新ができない、病院や図書館を維持できないなど、住民の快適な暮らしを維持するサービスが提供できなくなる恐れがあります。
その政策は的外れかも?
政府は出生率を上げる政策を打ち出しましたが、的外れな政策と言わざるを得ません。戦後出生率が一貫して下がってきたのは、女性が高学歴になり、さらに社会で活躍するようになった結果なのです。そもそも子どもを産むかどうかは個人の問題であり、政策的に誘導すべきことではありません。一方、自治体も地域の人口を維持するために、他地域からの「Uターン」や「Iターン」を促進する政策に取り組んでいますが、ほとんど効果を上げていません。日本全体の人口が減少しているので、地域間で人口の取り合いをしても痛み分けに終わるだけです。
政府や自治体の政策が適切なものであるか、有効かどうか、目的を達成できているかなどを判断するために実施するのが政策の「評価」です。的外れな政策や効果のない政策が存在するのは、きちんと評価ができていないことも一因です。
政策のあり方と有効性を根本的に問う評価を
政策評価の生まれたアメリカでは、新薬の治験に使うのと同じような手法を用いて、かなり厳密に政策の有効性を評価しています。現在日本で実施されている政策の評価は、目標値を決めて、達成できているかどうかを確認するという簡単なレベルに留まっています。もちろん、このような評価にも意義はありますが、日本全体が人口構造面の深刻な困難に直面する状況下では、政策のあり方や有効性を根本的に問うことができる評価が求められます。
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静岡文化芸術大学 文化政策学部 文化政策学科 教授 田中 啓 先生
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