千年も読みつがれてきた『源氏物語』

千年も読みつがれてきた『源氏物語』

栄華を極める主人公光源氏

『源氏物語』は千年もの歳月をこえて読みつがれてきた有名な物語です。日本の高校生なら、おそらく光源氏と呼ばれる主人公を知っていることでしょう。
光源氏は輝くばかりの美貌と抜きんでた才能に恵まれた皇子として生まれますが、将来を案じる父帝の英断により、皇位継承からは遠ざかる臣下としての人生を歩むことになります。敵対する右大臣方が権力を握る一時期は、光源氏みずから須磨に退去するつらい経験もしますが、その試練をのりこえて、やがて都に戻り、六条院という広大なすばらしい邸宅を構え、臣下としては異例の准太上天皇の位につき、帝をもこえるほどの栄華を築きます。

光源氏をとりまく女性たち

物語には、光源氏と女性たちのさまざまな恋が描かれます。母桐壺更衣に似た藤壺女御、その姪にあたる紫上など「紫」のイメージでつながる女性たちをはじめ、高貴な女性から中流貴族の娘たち、さらには家に仕える身分の女性たちまで、大勢の女性が登場します。恋の発端となる垣間見、出逢い、思いを伝える和歌のやりとりなど、それらの一つひとつが読む人の心を魅了します。とりわけ、秘密の恋、許されない恋を描いているのは、この作品の大きな特徴といってよいでしょう。それゆえ、光源氏はすばらしい栄華を築きながら、一方で心の内に苦悩も深めていくことになるのです。

時を生きる人々の物語

『源氏物語』は、宮廷を舞台とする政治と愛憎の物語です。作品には、日本の史実だけではなく中国の故事も深く関わり、フィクションでありながらまるで現実のような物語が展開されていきます。物語世界には、美しい装束や華麗な雅楽をはじめ、絢爛豪華な王朝の文化も描かれています。何より、あらがえない運命を受けとめて物語世界の歳月を懸命に生き、喜び、悲しみ、時には悩む人々の心に寄り添い、共感する。さらには現在を生きる自己の心をも見つめる。そこに、『源氏物語』が千年の時をこえて読みつがれる理由があるのです。

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跡見学園女子大学 文学部 人文学科 教授 植田 恭代 先生

跡見学園女子大学 文学部 人文学科 教授 植田 恭代 先生

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日本古典文学

メッセージ

古典文学ときくと、文法や敬語などが難しくて読みにくいというイメージがあるかもしれません。しかし、当時の人が「古典」として作品を書いたはずはありません。言葉や語法は違っても、そこには、私たちと同じように、喜び、悲しみ、人生を見つめる人々の心があります。時代をこえて人の心にふれ、現代に生きる自己を見つめなおし、未来とつながっていく。それこそが古典文学を読む醍醐味なのです。自分を大切にし、いまを一生懸命に生きているあなたと、一緒に勉強できるのを楽しみにしています。

跡見学園女子大学に関心を持ったあなたは

跡見学園女子大学では、1875(明治8)年の「跡見学校」開校以来、社会に柔軟に対応できる自立した女性を育成しています。この伝統を背景に、学生一人ひとりが4年間を通して、自分らしい生き方を見つけ、社会に出てからも自分の人生をデザインするための「ライフデザイン教育」を推進しています。その拠点になるのが2つのキャンパス。1・2年次は緑豊かな新座キャンパスでじっくり学び、3年次からは都心の文京キャンパスで学修。社会と関わりを持ちながら成長していくことができます。