熊本の黒川温泉に学ぶ、地方で集客を成功させる方法
黒川温泉の人気
熊本県阿蘇郡にある黒川(くろかわ)温泉は、大都市からのアクセスがいいとはいえない地域にありながら全国でベスト10、九州では湯布院に次ぐ人気の温泉街です。黒川温泉は江戸時代からケガや病気の湯治場として栄えてきましたが、1980年代に湯治の習慣がすたれ、客足も遠のきました。そこで地区に約30ある温泉旅館が集まって観光旅館協同組合を再編し、1990年代からマーケティング活動を本格化させることで人気の温泉街へと成長しました。マーケティングは一般的に企業ごとに行うものですが、黒川温泉の場合は全旅館が協力し、地区全体を一つの温泉に見立てたマーケティングに取り組んでいる点が特徴です。
幅広い集客戦略
例えば黒川温泉では3つの温泉に入ることができる「入湯手形」を導入しており、これを購入した客はのんびりと散策しながら、温泉情緒を楽しむことができます。また、車一台がやっと通れるような道を進んだ先にある「田舎」であることを逆手にとって、地区の周辺に2万本以上の木を植えたり、街並みから華美な看板や装飾を排し、建物も和風のデザインで統一したりするなど、あえて「秘湯」の雰囲気を強調する演出も成功しています。さらに繁忙期以外の期間には町全体をライトアップする「湯あかり」をはじめ、SNSを活用した戦略にも力を入れることで、幅広い層の客が訪れるようになりました。
逆境を逆手にとる
こうした黒川温泉ならではのマーケティング戦略の独自性は、現地の視察や関係者へのヒアリング、またほかの温泉街との比較といった研究を通してより明確になります。マーケティングといえば、誰もが知る大手企業の戦略が成功例として示されますが、黒川温泉の事例はそうした「王道」とは一線を画しています。地区内の温泉旅館が利害関係を超えて一致団結すること、また「田舎」を逆手にとった黒川温泉のやり方は、資金や資源に恵まれない地方企業や観光地の集客策を考えるうえで、多くの気づきを与えてくれます。
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先生情報 / 大学情報
熊本学園大学 商学部 商学科 教授 吉川 勝広 先生
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