講義No.12611 外国文学

中国のSNSでバズった農村女性の詩

中国のSNSでバズった農村女性の詩

中国で大ブームになった詩とは?

世の中では、映画やコミックなどがヒットして社会現象になることがあります。2015年に、中国のSNSであっという間にシェアされて社会現象になったのは、なんと貧しい農村の女性が書いた一篇の「詩」でした。余秀華の『中国の大半を横切ってあなたを寝にゆく』という愛情を詠った詩です。社会の底辺で生きる女性が発した自由奔放なこの詩は、社会現象を巻き起こしました。現代中国の女性は、結婚、貧富の格差、就職、育児と介護、家事労働など様々な社会問題に直面しています。こうした背景下で書かれた、女性の欲望と自由を渇望するストレートな詩が、多くの読者の共感を呼んだのです。

若者の心を揺さぶった「痛み」や「不安定さ」

余秀華が詩を創作するようになったのは、脳性まひのために長い文章を書くことが難しく、文字数の少ない表現を求めたからでした。体が不自由で、封建的な習慣が根強く残る農村で暮らす中で、彼女は自分の中に閉じ込められた気持ちを荒削りな言葉に託し、身体と精神の不自由さから生じる、広大な中国大陸を横切るほどのイメージの広がりと主体性を表現したのです。その詩に込められた「痛み」「底辺の経験」「不安定な身体の存在」は、様々な社会問題を抱えて生きる現代中国の若者の心を揺さぶりました。中国では言論統制が敷かれる一方で、個人が情報発信するセルフメディア(自媒体)が発達しています。こうした環境も、この詩人のデビューを後押ししました。

文学を通じて、その国を知り、視野を広げる

日本の高校でも李白、杜甫などの詩を学ぶように、中国には詩の伝統と、豊かな文化的土壌があります。中国語はスケールが大きく豊かな言語なので、詩歌や文学にふれることで中国の言葉や文化を知ることができます。特に現代詩からは、今を生きる人々の息吹を感じることができるでしょう。もちろん、文学にふれることは、言葉そのものの習得にもつながります。外国文学を読むことは、語学と文学両方の理解を深め、人間としての視野を広げることになるのです。

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先生情報 / 大学情報

熊本学園大学 外国語学部 東アジア学科 准教授 小笠原 淳 先生

熊本学園大学 外国語学部 東アジア学科 准教授 小笠原 淳 先生

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中国現代文学、文学、中国語学

先生が目指すSDGs

メッセージ

中国現代文学を学ぶ魅力の1つは、14億人以上が母語とする中国語というスケールの大きな言葉で書かれた文学作品や映画などを直接、タイムリーに鑑賞できるということです。中国語圏の文学は、時間的な長さと空間の広さを兼ね備えているので、古典から現代まで学びの興味は尽きません。しっかり言語を学んだ上で作品に取り組むことで、現代中国の人々の考え方や生き様などをより深く理解することができます。また、文学を読むことで培った想像力、翻訳力、コミュニケーション力は、社会に出てもきっと生かせるはずです。

先生への質問

  • 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

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熊本学園大学は、創立80年超の伝統、9万8千人超の卒業生を輩出し、4学部11学科、大学院5研究科を擁する文系総合大学です。商・経済・外国語・社会福祉の専門分野教育はもちろん、学修・就職支援や、特待生、奨学金、留学制度などで学生生活をサポートしています。皆さんの夢をカタチにするため、幅広い「教養」と高度な「専門」知識の修得を柱に、多様な人々と協力しながら地域や世界の課題に取り組むことができる人材を育成することに努めています。