都市化が進むと農家が困る? 工業と農業を両立させるには
農村部の都市化
農村部などに工場や住宅ができると、その地域の都市化が進みます。例えば熊本県には台湾の半導体企業が進出し、2024年に大きな工場が完成しました。これにより農村部の急激な都市化が進んでいくと予想されています。そして、その都市化が農業にどのような影響を及ぼすのか、研究が行われています。
都市化が起こると何が変わる?
都市化による影響として3つ想定されます。1つ目は平均賃金の上昇です。工場では人手を集めるために高い賃金で労働者を雇います。するとほかの企業も人員の流出を防ごうと、賃金を上げ始めます。人を雇っている農家も賃金を上げなければ、労働力を確保できなくなるかもしれません。2つ目の特徴は農地の転用です。工場や住宅を作るには土地が必要です。土地の需要により農地の価格が上がると、土地を売る地主が出てくるでしょう。しかしその土地を借りて農業をしていた人は事業を継続できなくなってしまいます。3つ目は特に半導体工場が進出した地域に見られる特徴で、水の需要の変化です。半導体工場では小さな部品を洗浄するときに、きれいな水が大量に必要になります。しかし農業でも水をたくさん使うため、取り合いになってしまう場合があります。このように労働力、土地、水は工業でも農業でも重要な要素です。これらの使い方をうまく調整できなければ、摩擦が起こります。
韓国の先行事例に学ぶ
半導体産業が熊本県の農業にもたらす変化や、将来起こりそうな課題の対策は、過去の事例を参考にできるでしょう。その1つが、熊本より大規模な半導体工場がある韓国の事例です。韓国では、半導体工場周辺の土地については、農業を専門にする地域と、それ以外に分ける利用調整が行われました。すべての土地を都市化させるのではなく、周辺に農業のための土地を残すのです。韓国の農業の構造や国土の使われ方は、日本と似ています。そのため韓国の経験や政策は、熊本県でも参考にしやすいものとして注目されています。
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