百年前からある「コンビニ」とは? 地域のニーズに合わせた福祉を
沖縄県の商店
沖縄県には、住民がお金を出し合い運営する、「コンビニ」のようなお店が百年前から存在します。そこでは食品や文具、化粧品や本などさまざまなものが販売されており、店員は住民が順番で担当します。高齢化や過疎化が進んだ現在も、島の住民の生活にとって欠かせない存在です。例えば同じものを立て続けに買う老人がいれば認知症の可能性を案じ、毎日来ていた人が急に来なくなれば様子を見に行くなど、商店としてだけでなく、地域住民を見守る役割も果たしています。また、2階にデイサービスを展開する店舗もあり、住民が集まって鬼餅づくりなどの伝統料理をつくりながら語らい、できたお餅を都心で働く孫に送ったりもしています。
各地に見られる事例
沖縄県では、もともと島外から来る行商人から買い物をしていましたが、住民が欲しいものをより安価に買うために、こうしたお店が作られるようになりました。沖縄県以外にも、四国のある町では廃業したガソリンスタンドの経営を地域住民が資金を出し合って引き継いだり、静岡のある道の駅の食堂を地域の女性団体が運営したりと、さまざまな地域で、住民が自分たちの生活やニーズに合わせた活動を行っています。
地域住民が担い手の福祉
生活保護法などの救貧法や年金、社会保険など、社会福祉サービスの主な担い手は国や行政です。公的な福祉サービスは私たちにとって不可欠ですが、例えば高齢者の割合は都心部と地方で格差が拡大する一方であり、また高齢者ばかりの街、団地が多い街、スーパーや商店が少ない街など、地域ごとの事情も異なります。「公平なサービス」という原理原則がある公的な福祉サービスは、こうした違いに対応しきれないという現実があります。社会福祉学の研究では、沖縄の事例をはじめとして、地域が主体となった福祉のあり方についても研究しています。そこで得た知見を、より地域にふさわしい福祉サービスや、地域住民が共働して暮らせる環境づくりに生かしているのです。
※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。
※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。
先生情報 / 大学情報
熊本学園大学 社会福祉学部 社会福祉学科 教授 仁科 伸子 先生
興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!
社会福祉学先生が目指すSDGs
先生への質問
- 先生の学問へのきっかけは?
- 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?