「勉強ぎらい」には理由があった! 経営と心理の意外な関係
試験の結果に対するアドバイスは逆効果?
経営学では、ヒトのマネジメントに役立つ心理学の理論についても学びます。それらの理論を応用すれば、勉強がきらいになってしまう理由を理解することもできます。例えば、テストで悪い点をとった時に、周りの人から「……のように勉強すべきだ」とアドバイスをもらうことがあるでしょう。リーダーシップ研究では、「悪い結果が出た後になって口を挟まれると、人はやる気を失う」という事実が確認されています。したがって、よかれと思ってアドバイスすること自体が、勉強のやる気を失わせてしまうことがあるのです。
「ご褒美」は勉強ぎらいを増やすことも
よい点をとったらご褒美をあげるという方法はどうでしょうか? 一見すると効果的だと感じられますが、この方法にも問題があります。例えば、趣味で絵を描くことが好きな人が、お金を稼ぐために絵を描き始めると、楽しくなくなってしまうことがあります。「楽しいから頑張る」という自主性をともなったやる気を内発的動機と言います。報酬の獲得を意識すると内発的動機が弱まることが、モチベーション研究において確認されています。したがって、ご褒美をあげるという方法は、試験の点を高める効果を持ちうるけれども、勉強自体の楽しさや自主性を犠牲にしてしまうのです。
目標を立てるだけでは不十分
では、「100点をとる」などの目標を立てることは、どうでしょうか? 挑戦的な目標を立てることによってやる気が高まるという議論は、目標設定理論として体系化されています。しかし、目標の設定はかなり注意深く行う必要があります。例えば、どう勉強したらよいかわからないのに、「100点をとる」という目標を無理矢理立てさせられても、勉強のやる気は高まらず、むしろ過剰なプレッシャーを感じてしまうでしょう。このような場合には、落ち着いて自分の現状を分析し理解するために、あえて「100点」などの数値目標を無視することが効果的であるという事実が、目標設定に関する研究において確認されています。
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武蔵野大学 経営学部 経営学科 准教授 宍戸 拓人 先生
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