配線もバッテリー交換も必要のない、ワイヤレス社会へ
ワイヤレスによる電力の伝送
ワイヤレスによる電力供給は少しずつ普及が進んでおり、今後さまざまな分野での応用が期待されます。例えば水中ドローンは、橋やダムなどの点検用途から、養殖業での作業や海洋資源の探索などの用途に適していますが、長時間稼働できません。現状のシステムでは、水中から引き上げて充電するということを繰り返さなければならず、ワイヤレス電力伝送の適用が待たれています。
淡水ではどうやって送る?
水中でワイヤレスに電力を伝送する原理は、高周波の電流を流した際に発生する「磁界」や電圧を加えた際に発生する「電界」を利用して電気を送るものです。現在主流となっているのは磁界を利用する方法ですが、充電器とドローンにそれぞれ直径の大きなコイルを内蔵しなければならず、またコイルから漏れ出る磁界がドローン内の精密機器に与える悪影響も防ぐ必要があります。一方、電界は電極間に集中するため、精密機器への影響が少なく、薄い電極だけなので軽量化が図れます。ただ、淡水は高周波に対して絶縁体のように振る舞います。そこで、電界に対する淡水の高周波特性を調査した結果、送電に適した周波数が見出され、90%以上という高い効率の伝送が実現できました。
海水中ではどうやって送る?
海水は淡水と異なり、イオンを多く含んでいるので、高周波では導体として振る舞います。そのため、海水中だと高周波による電流が流れ、拡散してしまうという問題がありました。しかし、高周波電流の通路を作り出すというアイデアが成功し、90%以上という高い効率の伝送が実現できました。近いうちに、水中ドローンが河川やダム湖、海中に常駐して点検活動から養殖現場の管理までさまざまな作業を行う日がくるでしょう。
このように、ワイヤレス電力伝送の研究は日々進歩しており、将来的には多くの配線をなくすことが可能になるでしょう。誤配線や断線をなくせるほか、積載量の軽減で燃費を向上でき、素材を節約できるなど、省エネルギー化、効率化に寄与できると考えられます。
※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。
※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。
先生情報 / 大学情報
豊橋技術科学大学 工学部 電気・電子情報工学系 教授 田村 昌也 先生
興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!
電磁波工学、電磁気学、電気・電子工学先生が目指すSDGs
先生への質問
- 先生の学問へのきっかけは?
- 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?