事故を防ぎ、環境負荷の低減を担う「トライボロジー」とは?

事故を防ぎ、環境負荷の低減を担う「トライボロジー」とは?

摩擦・摩耗・潤滑を総合的に扱う

トライボロジーとは、物と物がこすれる「摩擦」、摩擦が続くと物が削れていく「摩耗」、それを防ぐための「潤滑」の三つに関する問題を総合的に扱う学問と技術です。滑りを良くするための潤滑剤や機械部品、滑りやすい材料や形といった、化学、材料、機械に関わる分野を中心に、幅広い領域で研究されています。宇宙空間で働く人工衛星、高層建築の免震、人工関節、フライパンのフッ素樹脂加工などにもトライボロジーが役立っています。

ボールジョイントの滑りの研究

自動車のサスペンションなどに使われる「重要保安部品」の一つに、ボールジョイントがあります。パーツ同士のつなぎ目がおわん状の部品と金属球との組み合わせになっており、高い自由度で動くものです。潤滑剤として使われているグリースがうまく行きわたらないと、おわんと球がこすれて摩耗し、壊れて大事故を起こしてしまいます。滑りを良くする方法は経験則としては確立していますが、なぜその方法が良いのかはわかっていません。このままでは、新しい部品の開発ができないなどの問題が生じるため、機構を解明する研究が進められています。摩耗実験と電子顕微鏡などでの観察を繰り返し、グリースの種類による挙動の違いなどを調べている段階です。

環境負荷の低減を担う

部品の摩擦を小さくすることは、部品の損傷を防ぐだけではなく、伝達の途中で失われるエネルギー量を減らすことにつながります。さまざまなところで、トライボロジーは、エネルギーの損失を防ぎ、部品を長持ちさせるという、環境負荷の低減を担っているのです。摩擦や摩耗によって無駄になっている金額はGDP対比3%におよぶという試算もあります。どれだけ環境負荷を下げられるかがトライボロジーの使命であり、摩擦・摩耗の低減だけではなく、摩擦面に使える生物由来の新しい材料の開発も進められています。中でも、竹を主原料にした黒鉛を使った材料の開発は、放置竹林の問題解決にもつながることが期待されています。

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先生情報 / 大学情報

豊橋技術科学大学 工学部 機械工学系 准教授 竹市 嘉紀 先生

豊橋技術科学大学 工学部 機械工学系 准教授 竹市 嘉紀 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

トライボロジー、機械工学

先生が目指すSDGs

メッセージ

自分が興味を持てるものに一生懸命になってもらいたいです。社会の役に立つ、自分の将来につながるといったことに縛られず、純粋に興味のあるものに真剣に取り組んでみましょう。世の中は結構複雑で、思わぬことが役に立ったり、つながったりすることがたくさんあります。サッカーに打ち込んでいたら、サッカーボールはなぜこういうときに曲がるのかという疑問を持ち、物理に進むなどということもあります。思わぬところで人生は変わります。周囲に惑わされず、今興味のあることを大切にしてください。

先生への質問

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本学は、平成28年10月に創立40周年を迎えた工学系単科大学で、世界に開かれたトップクラスの工学系大学をめざしています。社会産業構造の変化、グローバル化時代に対応した人材育成の要求に対応するため、「基幹産業を支える先端的技術分野」と「持続的発展社会のための先導的技術分野」の2つの柱(5課程)で成り立っています。卒業生・修了生は「実践的・指導的技術者」として日本を代表する企業で活躍しています。