センス・オブ・ワンダーと学びを応用する力を育てる理科教育研究
授業の内容を日常とつなげる
急速に変化する社会において、学校教育には、社会的意識や積極性を持った子どもたちを育むことが期待されています。学習指導要領では3つの柱として「生きて働く知識・技能の習得」「未知の状況にも対応できる思考力・判断力・表現力等の育成」「学びを人生や社会に生かそうとする学びに向かう力・人間性の涵養(かんよう)」が掲げられました。授業で学んだことを、生活や社会のさまざまな場面と結びつけられるようにするのです。理科では自然の事物・現象に関する科学的な知識や思考力を養うとともに、学ぶことの楽しさや意義が実感できる授業づくりが試行されています。
教科を横断する学び
効果的だと期待されている方法の一つが、複数の教科を横断する授業です。学んだことを一つの教科内だけでなく、別の場面で活用する練習ができます。例えば高校で、国語と地学を結びつけた授業が実践されました。『源氏物語』に登場する台風を分析する授業です。『源氏物語』には台風が京都を通っていく描写が登場します。これは紫式部が実際に経験した台風がモデルだと考えられているため、地学の視点と歴史的な資料を活用して、作中の台風の経路や天気の状況に関する議論が行われました。こうした授業を通して、生徒たちは学んだことを身近な題材と結びつける方法や、古典や台風の研究が行われる過程などを学びます。
現場の教員を支えるために
横断的な授業を行うには、小中高で学ぶ内容や、各教科でいつ何を教えているのかをきちんと把握することが重要です。学習内容とかけ離れた難しい課題を急に提示しても、子どもたちの意欲を失ってしまいます。そのため何をどの順番で教えるか、ほかの教科とのタイミングをどう合わせるかなどを、別の教科の教員と事前に話し合う必要があります。しかし教育現場の教員は忙しく、授業を細かく分析したり、複数人で協力して授業計画を立てたりする時間があまりありません。だからこそ教育の研究者が分析や実証を行い、効果的な授業を共に考案することが求められています。
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先生情報 / 大学情報
四天王寺大学 教育学部 教育学科 講師 井村 有里 先生
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