気づきや発見がいっぱい! 博物館をもっとおもしろい場所に
博物館は「見せる」だけじゃない
歴史的な資料や美術品などを展示している博物館には、来館者に「見せる」前に、展示物に関する調査研究や、貴重な資料などを「守る」という大切な役割があります。さらに、見る人たちの「学びにつなげる」という役割もあります。実はこれらの「守る」「見せる」「学びにつなげる」という役割は、それぞれ連動しています。展示物を見て「この作品にはそんな意味があったのか」など気づきや学びがあると、また見たくなり、そこから展示物を人類共有の財産として守ろうという気持ちにもつながります。博物館は、保存されてきた文化財などの「モノ」に蓄積された「人の思い」を扱っている場所でもあるのです。
「おもしろそう!」から広げる学び
博物館で提供する「学び」は義務的な学校教育とは異なります。「社会教育」という分野で、強制されるものではないからこそ、学びの導入・きっかけのハードルを下げることが大切です。例えば、有名なロダン作の≪考える人≫という彫刻を折り紙で折ってみるというワークを提供すると、「あ、おもしろそう」と折り始める人たちが出てきます。仕上げに体や腕の角度の調整が必要で、そのためにじっくり彫刻を観察していると、「こういうポーズなのか」とか「何を考えているんだろう」といった気づきや疑問も生まれて、楽しみながら学びの世界に入っていけます。
VRとの共存
近年、さまざまな分野でバーチャルリアリティ(VR)が活用される時代になりました。バーチャル空間での展示で遠方の人が画面を通して資料を楽しめる博物館も出てきました。VRだから提供できる教育的な情報やプログラムの可能性も豊富にあるといえます。しかしVRは「現物」が持っている情報精度にはまだまだ追いついておらず、リアルな体験という意味では、博物館の存在価値は揺るがないでしょう。体験の場としての博物館とVRとは対立するのではなく、補完し合う関係で今後も教育活動が進むと考えられます。
※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。
※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。
先生情報 / 大学情報
常葉大学 教育学部 生涯学習学科 教授 堀切 正人 先生
興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!
美術史学、歴史学、考古学、博物館学先生への質問
- 先生の学問へのきっかけは?
- 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?