講義No.11849 生物学

マッチングしたら誰にも邪魔させない、植物の受粉の仕組み

マッチングしたら誰にも邪魔させない、植物の受粉の仕組み

めしべの迷路

受粉の後、植物のめしべについた花粉は花粉管という細い管をのばして、めしべの中の卵細胞に精細胞を届けます。めしべの中はたくさんの細胞が入り組んだ迷路です。花粉管はこの迷路の中を、どうやって卵細胞というゴールまでたどり着けるのでしょうか? 卵細胞の両脇には2つの助細胞があり、それが花粉管を呼び込むための誘引物質を出しています。花粉は誘引物質で卵細胞の方向を判断し、その方向に花粉管を延ばしていきます。花粉管は2つの精細胞を運び、それぞれが違う相手と受精を行います。1つの精細胞は卵細胞と受精して次世代となる胚を作り、もう1つの精細胞は中央細胞と受精して栄養をため込む胚乳を作ります。

マッチングの後、どうなる?

このように、2つの受精をほぼ同時に進行するという離れ業を植物は行っているのです。受粉時には、めしべについた花粉は1つとは限りません。いくつもの花粉が、まるで椅子取りゲームのように卵細胞をめざして花粉管をのばしていくのです。最初にたどり着いた花粉管がマッチングした後、それまで競争をしていたほかの花粉管はどうなるのでしょうか? マッチングした瞬間に、助細胞が誘引を止めてしまえば、2本目以降の花粉管は卵細胞までたどり着けないはずです。ここで出た仮説は、「誘引物質を出さなくなるような助細胞の不活性化が起きるのではないか」ということです。

細胞融合で不活性化する

そこで、助細胞を人為的に光らせた植物を使って、顕微鏡で受精後の助細胞をコマ落としで撮影して観察します。すると、受精が起きた組織では、助細胞と胚乳とが細胞融合によって1つになっていったのです。通常では植物の細胞は細胞壁に覆われているので、細胞融合はあり得ません。細胞膜同士が接触しないと起こらない現象が起きることが明らかになりました。助細胞と胚乳の細胞融合が助細胞の不活性化にどれだけ深く関わっているかは、これからの研究で明らかになるはずです。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。

先生情報 / 大学情報

横浜市立大学 理学部 理学科 准教授 丸山 大輔 先生

横浜市立大学 理学部 理学科 准教授 丸山 大輔 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

理学

先生が目指すSDGs

メッセージ

日本では年々、研究者の数が減っています。将来なりたい職業ランキングでは、男子の場合で研究者は10位前後に入っているのですが、大きくなるにつれて研究者をめざす人は少なくなってしまうようです。また、女子の場合ではランクに入らないのも、とても寂しいことだと思っています。
あなたが特定の分野に深く興味を持てるなら、最初から将来の選択肢から外してしまわずに、ぜひその道の研究者になることも視野に入れて勉強をしてもらいたいと思います。

先生への質問

  • 先生の学問へのきっかけは?
  • 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

横浜市立大学に関心を持ったあなたは

横浜市立大学は、「実践的な教養教育」を導入しています。高度な専門知識を教養教育を通じて身につけ、バランスのとれた人材育成を図る教育システムです。日本を代表する国際港湾都市に位置する大学として、世界に羽ばたく人材の輩出を目的に、国際感覚を養うさまざまな取り組みも充実しています。個々の可能性を最大限引き出すための厳しい教育プログラムを愛情を持って進めていきます。