マッチングしたら誰にも邪魔させない、植物の受粉の仕組み
めしべの迷路
受粉の後、植物のめしべについた花粉は花粉管という細い管をのばして、めしべの中の卵細胞に精細胞を届けます。めしべの中はたくさんの細胞が入り組んだ迷路です。花粉管はこの迷路の中を、どうやって卵細胞というゴールまでたどり着けるのでしょうか? 卵細胞の両脇には2つの助細胞があり、それが花粉管を呼び込むための誘引物質を出しています。花粉は誘引物質で卵細胞の方向を判断し、その方向に花粉管を延ばしていきます。花粉管は2つの精細胞を運び、それぞれが違う相手と受精を行います。1つの精細胞は卵細胞と受精して次世代となる胚を作り、もう1つの精細胞は中央細胞と受精して栄養をため込む胚乳を作ります。
マッチングの後、どうなる?
このように、2つの受精をほぼ同時に進行するという離れ業を植物は行っているのです。受粉時には、めしべについた花粉は1つとは限りません。いくつもの花粉が、まるで椅子取りゲームのように卵細胞をめざして花粉管をのばしていくのです。最初にたどり着いた花粉管がマッチングした後、それまで競争をしていたほかの花粉管はどうなるのでしょうか? マッチングした瞬間に、助細胞が誘引を止めてしまえば、2本目以降の花粉管は卵細胞までたどり着けないはずです。ここで出た仮説は、「誘引物質を出さなくなるような助細胞の不活性化が起きるのではないか」ということです。
細胞融合で不活性化する
そこで、助細胞を人為的に光らせた植物を使って、顕微鏡で受精後の助細胞をコマ落としで撮影して観察します。すると、受精が起きた組織では、助細胞と胚乳とが細胞融合によって1つになっていったのです。通常では植物の細胞は細胞壁に覆われているので、細胞融合はあり得ません。細胞膜同士が接触しないと起こらない現象が起きることが明らかになりました。助細胞と胚乳の細胞融合が助細胞の不活性化にどれだけ深く関わっているかは、これからの研究で明らかになるはずです。
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横浜市立大学 理学部 理学科 准教授 丸山 大輔 先生
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