通貨取引税で投機マネーをコントロールできる

通貨取引税で投機マネーをコントロールできる

マネーゲームに支配されている世界経済

21世紀の世界経済は、お金を右から左に動かすだけで巨万の富を産み出す“マネーゲーム”に支配されています。2003年の時点では、物やサービスを売買する経済、いわゆる実体経済の規模は3,600兆円でした。それに対して、実体のないバーチャルな経済、いわばマネーゲームの規模は何と1京(けい)3,000兆円という規模でした。
安く買って、高く売る、その差額が儲けになるわけです。マネーゲーム取引は社会的なメリットがほとんどありません。例えば、儲かるとなれば1日に何度も売買を繰り返す投機的な外国為替取引(FX)などはその典型と言えるでしょう。

通貨取引税の導入で為替が安定する

為替相場の乱高下は実体経済にも多大な影響を及ぼします。そこで、外国為替の取引に対して地球的規模で税金をかける「通貨取引税」を導入しようという動きがあります。税金を課すことで、巨額の資金を動かす投資銀行などの動きを抑制し、為替市場の動きを緩やかにするのが目的です。税率は0.005%と超低率であるため、投機目的ではない通常の金融取引にはダメージが少ないと考えられています。

通貨取引税の導入で貧困の半減を

2000年に「2015年までに1日1ドル未満で生活する人口を半減させる」などの目標を掲げた国連ミレニアム開発目標が定められました。これを達成するためには、現在の世界の年間ODAの総額にプラス5兆円が必要です。しかし、先進国のODAが増える見込みはなく、資金調達のめどはまったく立っていません。
そんな中で、もし通貨取引税(税率0.005%)の導入が実現すれば、全世界で年間約3兆3,000億円が創出されると見込まれています。しかし、通貨取引税は一国だけが導入しても、効果が限定的であまり意味がありません。主要通貨国の協調により、早期の通貨取引税の導入・実施が待たれるところです。
このような状況だからこそ、前述した「リーディング・グループ」の役割、特に議長国である日本の役割がとても大切なのです。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。

先生情報 / 大学情報

横浜市立大学 国際教養学部 国際教養学科 教授 上村 雄彦 先生

横浜市立大学 国際教養学部 国際教養学科 教授 上村 雄彦 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

国際政治学、国際開発学、環境政策学

メッセージ

大学では、「誰が何をどうしたら地球環境破壊、世界の貧困、紛争などをなくし、あらゆる人々が平和で幸せに暮らせる社会を創れるか」というテーマを研究し、「地球社会論」という講義を担当しています。講義の目的は、世界を変える人材を育成すること。地球社会が直面するさまざまな問題に果敢に挑戦し、問題を具体的に解決できる人材を育てたい。そんな想いで毎日学生たちと接しています。これからの学問は世界を変えて、人の役に立って、なんぼです。いまこそ、国境を越えて世界に飛び出し、よりよい社会を一緒につくっていきましょう!

横浜市立大学に関心を持ったあなたは

横浜市立大学は、「実践的な教養教育」を導入しています。高度な専門知識を教養教育を通じて身につけ、バランスのとれた人材育成を図る教育システムです。日本を代表する国際港湾都市に位置する大学として、世界に羽ばたく人材の輩出を目的に、国際感覚を養うさまざまな取り組みも充実しています。個々の可能性を最大限引き出すための厳しい教育プログラムを愛情を持って進めていきます。