人のからだを「中」から見て研究する、理学療法学における解剖研究
高齢者の多くは「腱板」が切れている?!
四十肩、五十肩といわれるように、人は高齢になるにつれ肩が上がりにくくなります。強い痛みを伴う場合は、腱板(けんばん)が断裂している可能性もあります。断裂は激しい運動によっても生じますが、高齢者の多くは日常生活の中で徐々に断裂が起きており、実は六十代以上の3分の1は無症状で腱板が切れているといわれています。広く断裂している場合には手術が必要で、術後は機能回復のためにリハビリを実施します。また、軽度で手術の必要がない場合も、多くはリハビリによって改善が期待できます。このようにケガや高齢などによって低下した身体機能の回復や改善を目的とした治療法の一つに、理学療法があります。
解剖でわかる人のからだの仕組み
人のからだはとても複雑です。身体機能の回復にはリハビリが欠かせませんが、やりすぎるとかえって悪化する危険もあります。どこをどう動かせば効率よく回復するのか、どれ程の負荷に耐えられるのか、人のからだの仕組みをより深く理解するため、近年の理学療法学には解剖研究が取り入れられています。医学の解剖実習等ではホルマリンなどの薬品に漬けられたご遺体を使うのが一般的です。ただし、硬くなって筋肉や骨の動きを捉えることが難しくなるため、日本では非常に希少な冷凍保存されたご遺体を解凍して使う研究があります。
これからの理学療法
解剖によって全身を調べることで、さまざまな事実が明らかになっています。腱板断裂においては、術後早期に強い負荷をかけすぎると再断裂のリスクがある一方で、適度にかけると効率よく回復します。手術をしないでリハビリを中心に行う際には、損傷の仕方によって安全な腕の位置が変わることがわかりました。特に高齢化の進む日本では、姿勢や動作などの日常生活への介入も多く、理学療法士の役割はますます重要になっていきます。
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帝京平成大学 健康メディカル学部 理学療法学科 講師 宮本 浩樹 先生
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