離婚後の親子の健全な交流のための面会交流
離婚後は単独親権の日本
日本では、離婚によって離れ離れになった親と子が定期的に交流するための「面会交流」という制度が、民法の家族法で定められています。日本では、離婚後の子どもの親権は、父親か母親のどちらかにしか与えられません。海外では離婚後も共同親権が認められる国がありますが、日本では単独親権となり、その80%以上を母親が持っています。面会交流は、裁判所の実務の状況を踏まえて2011年に民法に明記されました。日本の民法はドイツ民法から大きな影響を受けており、面会交流のあり方に関しても参考にすべき点があります。
ドイツでの面会交流の区分
ドイツでは、民法で面会交流の支援について定められており、実務のためのガイドラインも存在します。行政との連携も緊密です。ガイドラインによると、ドイツの面会交流は専門職員による介入度合いによって3段階に分類されます。最も介入度合いが高いのが①「監督つき交流」です。非親権者が子どもに暴力を振るう可能性や子の連れ去りの危険がある場合に行われます。面会に監督者が立ち会い、必要であればカメラなどで監視します。面会中に何か問題が発生すればすぐに職員が介入できる形式です。次が②「狭義の付き添い交流」です。①のような事情はないけれども、父母間で協力体制の構築が難しい場合に行われます。この場合は職員がときどき様子をうかがいます。職員が親と一緒に子どもの相手をすることもあります。最も介入度合いが低いのが③「援助つき交流」です。受け渡しの支援やグループ形式での父母教育が行われます。
主に民間団体がサポートする日本
日本の面会交流支援にはドイツのように統一的なガイドラインはありません。非親権者と子どもの交流は各地の支援団体(と一部の自治体)がサポートをしているのが実状で、統一された基準や資格もありません。日本における面会交流をドイツとまったく同じ区分にする必要はありませんが、各地でのサポートがより活発化してきたら、ドイツのように一定の類型化・均質化を図ることが望まれるでしょう。
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先生情報 / 大学情報
三重大学 人文学部 法律経済学科 准教授 稲垣 朋子 先生
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