科学的解明で「※個人の感想です。」が消える
髪の毛を守るか、おしゃれを取るか
中高生から高齢者まで、毛髪の悩みは人それぞれです。例えば、部活などで日焼けして、毛髪が傷んだという経験はないでしょうか。毛髪はタンパク質でできていますが、日焼けによる傷みは紫外線の影響でタンパク質の結合が切れるからだと考えられます。パーマをかけたり染めたりおしゃれしたい、でも髪や地肌への影響が心配だという人も多いでしょう。
髪質の研究をタンパク質から進めると?
毛髪の主な構成タンパク質であるケラチンは、アミノ酸が数珠状につながったもので、特定の複雑な立体構造を作ります。毛髪は年齢を重ねるとともにうねりが出てきますが、その原因がタンパク質の構造変化ということはわかっています。しかし、この複雑な構造のどの部分がどのように変化するのかは、科学的に解明されていないのです。そこで、シャンプーやトリートメントなどのヘアケア製品は、毛髪の外側であるキューティクルを美しくするようなものになっています。内部のタンパク質が変化しないようにする根本的な課題解決は、大変な手間や時間のかかる基礎研究の領域です。
毛髪の研究が進めば、ヘアケア製品も変わる
こうした研究では、さまざまな年代の毛髪サンプルを集めてタンパク質の構造を比較します。毛髪が元気な若い世代のサンプルは、あらゆる世代のモデルとなります。構造のしっかりした中心部分がどこなのかを調べ、それがどこから劣化して崩れていくのかを明らかにする研究が行われています。また、これまで多くの効果成分が開発されていますが、実際に毛髪内のどこでどのように働いているかわかっていない部分が多いのが現状です。そこで、効果成分がどの毛髪タンパク質のどの領域に結合しているかを明らかにする研究が行われています。このようにして毛髪のタンパク質研究が進み、ある成分がタンパク質のどこにどのような効果が起こせるか科学的に証明されれば、シャンプーなどのヘアケア製品から、主観的な「※個人の感想です。」という一文が消えていくことになるでしょう。
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先生情報 / 大学情報
山陽小野田市立山口東京理科大学 工学部 応用化学科 講師 佐伯 政俊 先生
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