化粧品の安全性を評価する、動物実験代替法の開発
拡大する動物実験規制
化粧品は日常に欠かせないアイテムで、販売にあたっては安全性を厳密に評価することが義務付けられています。評価方法として、かつては動物実験が主流で、例えばウサギを並べて目に化粧品を入れるなどの方法が用いられていました。しかし、動物愛護の観点から倫理的な問題が指摘されて、欧州連合(EU)では、2013年から化粧品や化粧品原料の有用性や安全性評価を目的とした動物実験が全面的に禁止されています。現在では、EU以外の国も禁止したり規制を強めたりしており、例えば、近隣の韓国、台湾は禁止、中国は規制を強化しています。
動物実験代替法の開発
日本では動物実験が禁止されていませんが、動物実験で評価を行った化粧品は禁止国には輸出できません。日本の化粧品メーカーは輸出の割合を増やしており、動物実験を行うことは、倫理面や企業イメージへの影響だけでなく、事業推進上の直接的なデメリットも大きくなってきています。そこで、近年は動物実験に代わる方法の開発が進んでいます。例えば、目への刺激を調べるには、ウサギを使う代わりに、人の角膜細胞を培養して作ったモデルに化粧品の成分をのせて刺激性を検出します。また、細胞培養により皮膚のしわの原因を調べて、しわ改善成分の効果を確認する方法もあります。最終的にはボランティアに実際に使ってもらい、効果を確認します。
品質管理も安心の礎
化粧品は、同じ人が同じ製品を使い続けることが多いものです。そのため、長期使用により成分が蓄積する可能性なども含めて、安全性を厳密に評価することが必要です。また、一度購入された製品の長期間にわたる使用を前提とした品質管理も欠かせません。例えば、長期間使用しても、クリームが分離したり、変色したりしないように、開発過程で厳密な試験が行われています。これには、さまざまな温度や環境条件下での試験が含まれ、10年たっても変わらない品質を実現するための努力が続けられているのです。
参考資料
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先生情報 / 大学情報
山陽小野田市立山口東京理科大学 工学部 医薬工学科 教授 小島 肇 先生
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