資源を持たない国だからこそ、新エネルギーの技術開発が重要
ますます必要となる電力を安定供給する技術
現在の日本は、必要な電力の大半を火力発電で作っています。電力需要は、今後さらに高まることが予想されていますが、CO₂排出量削減という世界的な課題がある中で、石炭・石油などを燃やす火力発電所の数を大幅に増やすわけにはいきません。また、東日本大震災による原発事故のことを考えると、新たな原子力発電所の設置も難しくなっています。そもそも日本は、石油などの資源をほとんど輸入に頼っているので、将来、国際情勢が大きく変化しても電気を安定供給できるようにするため、エネルギー自給率の高い新たなエネルギー源の開発は非常に重要なのです。
「地上の太陽」には新しい冷却技術が必要
現在、有望視されている新エネルギー技術の1つは、太陽で起きている核融合反応を地上の核融合炉で発生させ、エネルギーを取り出すというものです。現在、フランス国内で実験炉の建設が進められており、近年中に運用が開始される見通しです。ただし、核融合炉を安定的に運用するには「冷却」という課題が生じます。太陽と同じ反応を起こすため、核融合炉の温度は数億度に達するからです。そこで現在、効果的な冷却技術を開発するため、国際共同研究が進められています。
革新的省エネ技術も必要
一方、再生可能エネルギーの有効活用法の一つとして研究が進んでいるのが「地熱発電」です。すでに現在、温泉をくみ上げて蒸気タービンを回す手法の地熱発電が行われています。しかし、温泉水に含まれるミネラル分が蓄積するため、大がかりな定期メンテナンスが必要なうえ、周囲の温泉の湧出量に影響を与える可能性もあります。そこで、源泉近くの土壌に熱交換器を埋め込み、純水を加熱してタービンを回す研究が進められています。このほか、半導体の材質をSiC(シリコンカーバイド)に変えて、電力損失を大幅に減らす研究、製鉄の熱エネルギーを電気エネルギーに変える研究など、革新的な省エネ技術や新たなエネルギー源の開発が進められています。
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山陽小野田市立山口東京理科大学 工学部 機械工学科 教授 結城 和久 先生
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