ディスプレイ、窓ガラス、発電、「液晶」が生み出す多様な機能
固体と液体の間にある状態
スマートフォンやテレビの画面でおなじみの「液晶」ですが、液晶とは物質の種類ではなく、「状態」を指します。普通、固体から液体になると分子が自由に動き回れますが、分子が棒状(または円盤状)の物質は、特定の温度で「分子同士はくっつかずに流動的ながら、分子の向きがそろっていてある種の制限がある状態」になります。この固体と液体の中間の状態が「液晶」です。ある種の液晶物質は電圧をかけると分子の向きが変わるという性質があり、その向きによって光の屈折率が変わることを応用したのが、液晶ディスプレイです。
組み合わせで生まれる新たな機能
液晶は、ディスプレイ以外にさまざまなものに応用されています。その一つが、プライバシーを守りたいときには「透明からすりガラス状に変えることができる」スマートウィンドウです。高分子材料に液晶物質を混ぜて板を作ると、光を乱反射してすりガラス状になり、電圧をかけると液晶分子の向きがそろって乱反射がなくなり透明になるのです。
また、液晶物質を混ぜる母体を「強誘電性」という性質のある物質にすると、圧力で発電できる機能が生まれます。それを利用して、「踏むと発電してセンサにもなるガラス」の研究が進められています。さらに、ナタデココから抽出したセルロースや、洗濯のりの原料を液晶に混ぜてディスプレイ部品を作るなど、身近な材料と液晶を組み合わせて新たな機能を開発する研究も行われています。
玉虫色は“液晶色”? 液晶の未知の可能性
昆虫のタマムシが複雑で美しい色をしているのは、そういう色素があるのではなく、「構造色」といって光の複雑な反射によるものです。これも液晶の仕組みが関連しており、この構造をまねた素材も研究されています。また、現在の液晶物質は化学合成されたものですが、かつてはイカスミや植物などから抽出していたことから、生体と相性のよい液晶が、医学や薬学で応用できるかもしれません。このように、液晶の応用の可能性は幅広い分野で期待されています。
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山陽小野田市立山口東京理科大学 工学部 電気工学科 准教授 穐本 光弘 先生
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